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 英国の競争・市場庁(CMA:Competition and Markets Authority)は2021年8月20日、米NVIDIA(エヌビディア)による英Arm(アーム)の買収について、「競争上の懸念がある」とする報告書をまとめ、詳細な調査が必要だと発表した。この買収が実行されると、アームの知的財産(IP)へのアクセスが制限され、競合他社の競争力が損なわれる恐れがあると指摘。データセンターやゲーム、IoT、自動運転などの多岐にわたる分野で、イノベーションを阻害する可能性があるとの懸念を示した。その結果、消費者が新製品を入手できなくなったり、価格が上昇したりする可能性があるとCMAは指摘している。

 CMAによれば、こうした懸念を払しょくするために、取引の実施後に競争を維持するための行為を約束する「行動的問題解消措置(behavioral remedy)」をエヌビディアが提案したという。だが、それでは競争上の懸念を解消できないとCMAは判断し、より綿密な調査が必要だとした。

 今回のCMAの報告書は、英国デジタル・文化・メディア・スポーツ省(Department for Digital, Culture, Media & Sport、DCMS)の大臣(SoS:Secretary of State)に提出したもの。今後、詳細な「フェーズ2」の調査を実施するかどうかを、SoSが判断するという。

 エヌビディアは20年9月に、アームを傘下に持つソフトバンクグループと買収で合意。それ以降、各国の規制当局から認可を得られないのではないかという懸念が投資家や報道から出ているが、エヌビディアの創業者 兼 CEO(最高経営責任者)のJensen Huang(ジェンスン・フアン)氏は一貫して、順調という姿勢を崩いていない。そんな同氏が今後どのようにコメントするか、注目が集まりそうだ。

2021年4月開催の「GTC 2021」の基調講演でArmのエコシステム拡大を強調するエヌビディアのHuang氏
2021年4月開催の「GTC 2021」の基調講演でArmのエコシステム拡大を強調するエヌビディアのHuang氏
(出所:「GTC 2021」の基調講演動画をキャプチャーしたもの)
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