金型メーカーであるエムアイモルデ(静岡県富士市)は、セルロースファイバー強化プラスチックである「グリーンチップCMF」(巴川製紙所・エフピー化成工業)の成形テストを、エフピー化成工業(静岡県富士市)の協力の下で実施した。

 グリーンチップCMFの成形性と機械特性は、エフピー化成工業自身による評価で試験片レベルでは良好であるとの結果は得られていた。しかし、実際の製品で使用してみないことには、その真価はやはり分からない。

2つの金型でテスト成形

 エムアイモルデは自社で所有する2つの金型で、製品レベルでの成形の確認を実行。碁盤目状の細かい網目で形成される直径120mmほどのスピーカーグリルの金型と、手のひらサイズのランナーに収まったプラモデルパーツの金型だ。一般のプラスチックに対しても成形の難易度が高い金型を課題としてあえて選定し、成形性について慎重にテストしていった。ポイントは、量産性を損なわずに高い品質が保てるかどうかを探ることと、設計製造で特に配慮すべき点などを明らかにすることだ。

 今回のテストでは、グリーンチップCMFの中でもポリプロピレン(PP)を母材とするものを使用。PPは成形時の収縮が大きくヒケ(冷却時の収縮による変形)が生じやすいが、セルロースファイバーを混合すれば、ヒケを抑えられる。ただし、セルロースファイバーの混合比率が増えるほど成形時の溶融プラスチックの流動性は悪くなる。

 成形時の流動性をなるべく良好にするには、金型の温度制御にコツがあると、エフピー化成工業代表取締役社長の赤澤英郎氏はいう。「セルロースファイバーを含んだPPは、純粋なPPと比較して成形機で設定する溶解温度が低めであり、流動性が悪くなりやすい。その分、金型を温めて流動性を確保するほうがよい」(赤澤氏)。エムアイモルデ代表取締役の宮城島俊之氏もそのようにアドバイスされたという。

 しかし金型温度を上げれば、冷却時間がその分かかり、サイクルタイムが延びてしまう。それは避けたいので、セルロースファイバーを高配合したプラスチックの特性に適した金型温度を検証した。「結果としては、赤澤さんが懸念していたほどは金型温度を気にせずに成形できる可能性が見えた」(宮城島氏)。

成形サイクルは低下せず、離型時には工夫が必要か

 スピーカーグリルの金型では、外周部の縁にある1点のゲートから溶融プラスチックを注入し、内部の直径100mmの網目部分全体に行き渡らせることになる(図1)。網目の線の幅は0.6mmと細く、プラスチックの流動性が悪いとなれば、ちゃんとプラスチックが充填されるか心配になる製品形状だ。テストではセルロースファイバーの含有率13.75%、20%、27.5%の材料を使い、金型温度は15℃、20℃(常温水)、50℃に設定してみた。その結果、金型温度によらずプラスチックの流動性に大きな違いは見られなかった。

図1 スピーカーグリルの金型による試作品
図1 スピーカーグリルの金型による試作品
網目の線の幅は0.6mmと細い。通常のプラスチックでも流動性や離型性について厳しい条件の金型でテストした。(出所:エムアイモルデ)
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 ただし、離型の際に、網目部が破損してしまう場合があった(図2)。「細かい四角の網目を張り巡らした形状では、金型(コア)には網目1つひとつに相当する非常に多数のピンを設けるため、もともとプラスチックの張り付きが生じやすい。純粋なPPは張り付いたとしても成形品がたわんでうまく引きはがせるが、セルロースファイバーを含むと成形品のじん性が落ち、たわまなくなったために割れてしまった」(宮城島氏)

図2 離型時に破損した例
図2 離型時に破損した例
硬くてじん性が少ない分、離型時に割れやすい。このような問題点を洗い出し、実用化の時期に備える。(出所:エムアイモルデ)
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 セルロースファイバー強化プラスチックは高強度で硬い素材である一方、「もろい」素材でもある。それは成形後の部品の性能を左右するのはもちろん、成形時の離型性にも影響する。プラスチックは金型温度を低くするほど張り付きやすくなり、セルロースファイバーを配合するとその傾向がさらに強くなる。

 半面、セルロースファイバーは成形後の収縮が少ないため、型への抱きつきが弱くなって離型性は悪くならないのでは、という仮説もあった。しかしながら、じん性低下の影響のほうが大きかったという。

 スピーカーグリルの成形自体は「失敗」だが、宮城島氏にとっては「成功」である。この評価の目的が、セルロースファイバー強化プラスチックの特性の把握にあるからだ。「今後の製品設計や金型設計の知見が得られて、かつ将来性も十分感じた」と同氏は言う。

 成形サイクルタイムが想定していたほどには遅くならなさそうと分かったのも収穫だった。金型温度と流動性に相関がみられなかったためだ。「既存製品と同等なサイクルで成形できる見込みが立ち、量産時に現実的な生産性を確保できると考えた」(宮城島氏)。