新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)は2021年8月26日、水を太陽光エネルギーと光触媒で分解して生成した水素(H2)「ソーラー水素」システムの大規模実証実験に成功したと発表。学術誌「Nature」の同年8月25日付けオンライン速報版にも掲載された 論文

東京大学のキャンパス内に設置した「ソーラー水素」生成・分離システム
東京大学のキャンパス内に設置した「ソーラー水素」生成・分離システム
(写真:NEDO)

†人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)=太陽光と光触媒で水素と酸素を生成し、そこから分離膜で水素を分離。その水素と二酸化炭素(CO2)を、改質して水素と一酸化炭素(CO)の“シンガス(Syngas)”にしてから合成触媒を用いてエチレンなどの低級不飽和炭化水素(オレフィン)を製造するプロセスの確立を目指す技術研究組合。設立は2012年10月。INPEX、TOTO、ファインセラミックスセンター、富士フイルム、三井化学、三菱ケミカルが参画。

 この実証実験は、水を入れて太陽光を照射すると水素と酸素を生成する光触媒パネル反応器と、その混合気体から水素を分離する分離膜を内蔵したガス分離モジュールで構成するシステムの規模拡張性と安全性を検証するもの。ARPChemが東京大学、富士フイルム、TOTO、三菱ケミカル、信州大学、明治大学と共同で実施した。光触媒パネル反応器の受光面積は計100m2とARPChemとしては過去最大規模である。システムは2019年8月に茨城県石岡市の東京大学の施設内に設置したとする。

25cm角の光触媒パネル反応器
25cm角の光触媒パネル反応器
光触媒シートとガラスの間に0.1mm程度の隙間があり、そこに水を供給。発生した水素と酸素の混合ガスもそこから取り出す。(写真:NEDO)

 発表によれば、実証試験の結果、水分解反応により生じた水素と酸素の混合気体から高純度の水素を、安全かつ安定的に分離・回収することに成功したとする。

 一般的な水電解装置では、水素と酸素はそれぞれ異なる電極に分かれて発生するため、安全性についての懸念は小さい。一方、このNEDOとARPChemのシステムでは、発生した水素と酸素が混合した状態で得られるとする。