デンソーと順風路(東京・豊島区)、京都府伊根町の3者は2021年9月1日、タブレット端末を利用した電気自動車(EV)タクシーのオンライン予約サービスの実証実験を開始した。過疎化や高齢化が進む地方における交通弱者の移動を支援するのが狙いである。実証実験は伊根町で同年10月31日まで行い、事業化に向けた課題の解決に取り組む。
同日にオンライン開催した説明会で、デンソー自動車&ライフソリューション部の杉山幸一氏は、「実証実験を行う伊根町の人口は約2000人(世帯数は905世帯)で、高齢化率は46%に達しており、交通空白地になりつつある。今回の実証実験とその後の事業化を通じて、地域の交通課題の解決や活性化に寄与したい」と強調した(図1)。
実証実験は、デンソーが開発した地域情報配信システム「ライフビジョン」と、順風路の車両予約管理システム「コンビニクル」、伊根町の世帯管理システムを連携させて行う。伊根町はデンソーのライフビジョンを利用した情報提供システム「いねばん」の運用を20年4月に開始。同システムの運用開始に合わせて、同町の全世帯にタブレット端末を無償配布した。
今回のオンライン予約サービスの実験は、この伊根町の情報提供サービスに追加する形で行う(図2)。また、実験ではEVタクシー3台を使う。
実験で使うタブレット端末の予約画面は、パソコンやスマートフォンなどの操作に不慣れな高齢者でも使いやすいようにした。具体的には、トップ画面にある「予約サービス」のボタンを押すと、その世帯の住民の名前が表示される。
次に自分の名前を選び、乗車場所や乗車時間、目的地を指定するだけで予約が完了する(図3、4)。「IT機器に不慣れな高齢者でも簡単に操作できるUI(ユーザーインターフェース)を開発した」(杉山氏)と言う。
なお、伊根町は今回の実証実験で得た知見を生かして、22年4月に「デマンド交通サービス」を開始する予定である。現在、診療所への通院や幹線バス路線への接続などに利用されている町内公共交通(コミュニティバス)に代わるもので、EVタクシーなどの電動車両を用いて住民の「ドア・ツー・ドア」の移動を支援する。