2021年8月23日、「GOING BEYOND BARRIERS」をテーマに、世界中の学生からスポーツ×テクノロジーの力で社会の壁を越えるアイデアを募るプロジェクト「SPORTS CHANGE MAKERS」の最終プレゼンテーションが開催された。このプロジェクトは、オリンピック・パラリンピックの公式パートナーを務めるパナソニックが、同社の映像・音響技術を用いた新しいアイデアを募集するというもの。直近、そして今後のオリンピック・パラリンピック開催地である日本・東京、中国・北京、フランス・パリ、米国・ロサンゼルスの4都市で予選会を実施。各国・地域から1組ずつ代表が選出され、プロジェクトの協力を務めた国際オリンピック委員会(IOC)や国際パラリンピック委員会(IPC)の要職者などの前でアイデアを披露した。

フォトセッションの様子。写真右から二人目が日本代表の横瀬健斗氏
フォトセッションの様子。写真右から二人目が日本代表の横瀬健斗氏
(写真:SPORTS CHANGE MAKERS)
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 この日の最終プレゼンテーションに登壇した各国・地域のアイデアは次の通り。

中国代表:インテリジェントタンデム電動アシスト自転車「LINK」

 リアルタイム翻訳機能とビデオブログ(Vlog)機能を搭載した二人乗りの電動アシストタンデム自転車。「言語の違いによる異文化コミュニケーション不足」というバリアーを超えることを目指したもので、オリンピック・パラリンピック開催地に設置し、地元住民と観光客のコミュニケーション促進を図るというアイデアだ。

中国代表のアイデア「LINK」のイメージ画像。自転車は自動アシスト運転機能が付いており、利用者はコミュニケーションや観光に集中できる
中国代表のアイデア「LINK」のイメージ画像。自転車は自動アシスト運転機能が付いており、利用者はコミュニケーションや観光に集中できる
(写真: SPORTS CHANGE MAKERS)
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米国代表:聴覚障がい者向けの観戦体験向上ヘッドセット「Immersi-Vision Visor」

 音が聞こえないためにスタジアムやアリーナで現地観戦をしても没頭し切れないという聴覚障がい者のために、観衆の感情や会場の雰囲気を視覚化することで、試合に没頭できるようにするヘッドセット。試合中のニュースや選手情報なども確認でき、観戦体験の向上を図る。

米国代表のアイデア「Immersi-Vision Visor」のイメージ画像。観衆の感情がスタンプや絵文字、色で表現されることで、聴覚に障がいがあってもタイムラグなく盛り上がることができる
米国代表のアイデア「Immersi-Vision Visor」のイメージ画像。観衆の感情がスタンプや絵文字、色で表現されることで、聴覚に障がいがあってもタイムラグなく盛り上がることができる
(写真: SPORTS CHANGE MAKERS)
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欧州代表:審判員の動きを元に競技を解説する「REFEREE TRANSLATOR」

 柔道など初心者にはルールがわかりにくい競技において、今何が起こっているかを視聴者に伝えるというアイデア。審判員にはモーションセンサーを装着し、その動きや判定を自動的に翻訳。視聴者はスマートフォンなどのデバイスでアプリを立ち上げることで情報を取得し、ストレスなくルールの理解が可能となるため、競技理解の向上と観戦体験の向上に寄与できる。

欧州代表のアイデア「REFEREE TRANSLATOR」のイメージ画像。レフェリーの動きを瞬時にアプリで表現し、観戦体験向上につなげる
欧州代表のアイデア「REFEREE TRANSLATOR」のイメージ画像。レフェリーの動きを瞬時にアプリで表現し、観戦体験向上につなげる
(写真: SPORTS CHANGE MAKERS)
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日本代表:アスリートの「動き」を遊具として体験できる「Our Play Park」

 公園で遊ぶ子供たちに、スポーツを見るだけではなく、体験して感じてもらうために、アスリートの「動き」を体験できる遊具や設備が常設された公園を造るアイデア。パナソニックの映像技術を活用してアスリートの動きを撮影し、3DCGシミュレーションを作成。その映像アーカイブから3次元データを抽出してオブジェ化するというもの。走り高跳びの選手であればその跳躍から着地までの流れを、競泳選手であれば水中から出てきた際の動きを飛び石のような形で表現する。そうして作られたオブジェクトに触れることで、スポーツの楽しさやアスリートのすごさを体感する。

日本代表のアイデア「Our Play Park」のイメージ画像。画像は走り高跳び選手の動きをオブジェクトにしたもの。2次元の映像から3次元データを抽出してオブジェクトを製作した
日本代表のアイデア「Our Play Park」のイメージ画像。画像は走り高跳び選手の動きをオブジェクトにしたもの。2次元の映像から3次元データを抽出してオブジェクトを製作した
(写真:SPORTS CHANGE MAKERS)
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パリ大会で具現化なるか

 今回の最終プレゼンテーションでは、披露されたアイデアの優劣はつけられなかったが、中でも特に審査員に称賛されたのが日本代表のアイデアだ。発案者である横瀬健斗氏(京都工芸繊維大学大学院)は、多くの人にとってスポーツに初めて触れる場所である公園を、4年に1度だけではなく日常的にオリンピック・パラリンピックの雰囲気を味わえる場所にしたいという考えからこのアイデアを思いついたという。プレゼンを聞いたIOCテレビ&マーケティング部門 マネージングディレクターのティモ・ルメ氏は「心を奪われました」と口にした上で、次のように感想を述べた。

 「スポーツと文化、アートがパーフェクトに融合しているプレゼンでした。非常に多くの人に訴求できるアイデアだと思います。かつてセバスチャン・コー氏(ロンドンオリンピック組織委員会会長、IOC委員)が『オリンピックゲームの目的は若い世代がスポーツをすることの促進』と話していましたが、このアイデアは子どもたちが自然とスポーツを選択することにつながると感じました」(ティモ氏)

 また、パリオリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のチーフコマーシャルオフィサーを務めるマルレーヌ・マズール氏も次のように賛辞を贈った。

 「本当に驚きました。我々はいかにして大会のレガシーを遺していくのかを考えていますが、24年の大会後、パリ自体がオリンピック・パークにもなり得ると感じました。このアイデアに息が吹き込まれて、パリで何らかの形になればと思いました。今の段階ではそのための具体的な方法は思いついていませんが、とても素敵なアイデアです」(マルレーヌ氏)

 日本代表のアイデアを含め、この日発表された各国・地域のアイデアは、パナソニックがバックアップをしながらIOCやIPCともディスカッションを重ね、具体化が可能かを検討していくという。

 そう遠くない将来、「Our Play Park」で遊んだことがきっかけでオリンピアンやパラリンピアンになったり、各国・地域のアイデアによって異文化交流や観戦体験の向上が図られたりするということが当たり前のように起こるかもしれない。