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 アダマンド並木精密宝石(東京・足立)は2021年9月9日、世界最大となる直径2インチ以上(55mm)のダイヤモンドウエハーの製造に成功したと発表した。同社の従来技術では直径1インチ(約25mm)サイズが上限だったが、階段状のサファイア基板にダイヤモンドを成長させる「ステップフロー成長」を適用したことによって大口径化を可能にした。同社によると、パワー半導体の研究開発を効率的に行うには少なくとも2インチ(約51mm)の基板が必要であるという。今回それを達成したことによって、「ダイヤモンド半導体」の企業研究に拍車がかかる可能性がある。

開発した55mm径のダイヤモンドウエハー
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開発した55mm径のダイヤモンドウエハー
(出所:アダマンド並木精密宝石)

 今回採用したステップフロー成長法は、GaN(窒化ガリウム)などで用いてきた技術であり、階段上の基板に目的物質を成長させるというものだ。今回は7度に傾斜したサファイア基板に、イリジウム(Ir)のバッファーを挟んでセ氏1000度の成長温度でダイヤモンドを育成した。同社によれば、ダイヤモンドのヘテロエピタキシャル成長にステップフロー成長を適用するのは世界初となる。

 これまでダイヤモンドウエハーの大型化を阻んでいたのは、ダイヤモンド層の剥離時の破断であった。この成長法では、基板が階段状であるために冷却時の応力が基板の水平方向に働く。したがって、力を加えなくてもIr層とサファイア層を自然に剥離できる。そのために、55mm径という従来より大きなウエハーでも破断なく作製できるようになった。工程がシンプルになりコストの低減も見込めるという。今後、最大8インチ(約203mm)まで大型にしていく。

ステップフロー成長法の概要
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ステップフロー成長法の概要
水平方向に応力がかかるのでスムーズに剥離できる。(出所:アダマンド並木精密宝石)

 さらに、この方法でつくった結晶のX線回折のスペクトル測定を実施したところ、この成長法が結晶品質の向上をもたらすことも確認した。

X線の回折強度曲線
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X線の回折強度曲線
結晶面(004)と(311)でのスペクトル。いずれも世界最高水準であるという。(出所:アダマンド並木精密宝石)

 佐賀大学 理工学部 教授の嘉数誠氏は、このダイヤモンドウエハーでダイヤモンド半導体と呼ばれるパワー半導体デバイスを作製した。従来技術によるダイヤモンドウエハーを使ったパワー半導体では出力電力が179MW/cm2だったが、今回はその約2倍で世界最高となる345MW/cm2の出力電力を記録した。嘉数氏によれば、ウエハーの高純度化とデバイス技術の改善が性能向上の要因であるという。

作製したダイヤモンド半導体の構造
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作製したダイヤモンド半導体の構造
(出所:アダマンド並木精密宝石)
作製したダイヤモンド半導体の特性
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作製したダイヤモンド半導体の特性
(出所:アダマンド並木精密宝石)

 ダイヤモンド半導体は、出力や放熱性で優れたパワー半導体物性を持ち、6G基地局や宇宙での使用に適合性がある。嘉数氏は、「5年以内に、まずはニッチな分野からダイヤモンド半導体を実用化していきたい」という。