PR

 移動通信の標準化団体である3GPP(Third Generation Partnership Project)は2021年9月3日、5G高度化のための仕様「リリース17」で強化される産業向け機能の解説を公開した。全てのアプリケーションで時間同期やTSC(Time Sensitive communications、リアルタイム性の高い通信)が利用できる機能を追加。同一または異なるドメインにあるAF(Application Function、アプリケーション機能)で、スケジューリングの最適化や時間同期のアクティブ化/非アクティブ化が可能となる。AFが異なるドメインにある場合は、公開フレームワークのNEF(Network Exposure Function) APIを介してTSCTSF(Time Sensitive communication Time Synchronization function)に入力し、同一ドメインにある場合には、AFから直接TSCTSFに入力することで処理を行う。

関連ニュースリリース: Industrial 5G - Enhanced support of Industrial IoT in the 5G System (Rel-17)
TSCと時間同期サービスを可能にする仕組み
TSCと時間同期サービスを可能にする仕組み
(出所:3GPP)
[画像のクリックで拡大表示]

 時間同期については次の2つの方式をサポートする。

 5Gクロック同期:NG RAN(次世代無線アクセスネットワーク)の時間同期を行うと同時に、UE(ユーザー端末)にも提供する。UEへの無線インターフェースを介した5Gクロック同期は、TS 38.331にて規定する。

  (g)PTP同期:(g)PTP(generalized Precision Time Protocol、IPやEthernetにも使われる汎用時間同期プロトコル)を使った時間同期。IEEE 802.1AS、IEEE 1588に準拠する。

 これら2つの同期処理は互いに独立しており、gNB(5G基地局)は5G GM(グランドマスター)クロックに同期するだけでよい。

5GシステムをPTPインスタンスとして時間同期を実現する
5GシステムをPTPインスタンスとして時間同期を実現する
(出所:3GPP)
[画像のクリックで拡大表示]

 (g)PTPを使った時間同期をサポートするために、5Gシステムは、下記のいずれかで運用される。

  • (1)IEEE 802.1ASの時刻認識(time-aware)システム
  • (2)IEEE 1588のバウンダリークロック
  • (3)IEEE 1588のpeer-to-peer Transparentクロック
  • (4)IEEE 1588のend-to-end Transparentクロック

 5Gシステムは、上記に基づきIEEE 802.1ASやIEEE 1588に準拠してモデル化される。プロビジョニングには、3GPPで標準化されたDefault PTPプロファイル、IEEE 802.1ASで定義されたタイミング転送用のPTPプロファイル、IEEE 1588で定義されたSMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)プロファイルが使われる。

 UEの上りリンク時間同期や、UE間時間同期、ネットワークの下りリンク時間同期時には、(g)PTP同期を使用する。端末やネットワークなどエッジに配置されるTT(Time Sensitive Networking Translator、リアルタイム性の高いネットワーク中継装置)は、IEEE 802.1ASやIEEE 1588に準拠して処理を行う。

 5Gシステムが時間同期サービスを使用する際の通信特性をまとめたTSCAI(Time Sensitive Communication Assistance Information)も用意する。これにより、決められた時間内に必ず通信を完了する必要がある時間確定的(deterministic)通信や定期的に行う必要がある通信のスケジューリングを効率的に行える。PDU(Protocol Data Unit)セッション型のEthernetやIPにも適用できる。

 5Gシステムは、AFや公開フレームワークNEFを介して提供された情報に基づいて、TSC支援コンテナを決定し、IPやEthernetタイプのPDUセッションにPCF(Policy Control Function)を提供する。

 異なるドメインにあるAFでは、入力ポート、周期性、通信方向、存続時間、時間ドメインなどの情報を参照して、バースト到着時間などの通信パターンパラメーターをNEFに提供。NEFは受信した情報をTSCTSFに転送する。AFが同一ドメイン内にあれば、通信パターンパラメーターを直接TSCTSFに提供する。TSCTSFは、TSC支援コンテナ内の通信パターンパラメーターを決定し、PCFを介してSMF(Session Management Function)に転送し、IPやEthernetとのリアルタイム性のあるデータ転送を実現する。

5Gシステムの通信特性をまとめたTSCAI(Time Sensitive Communication Assistance Information)
5Gシステムの通信特性をまとめたTSCAI(Time Sensitive Communication Assistance Information)
(出所:3GPP)
[画像のクリックで拡大表示]