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 東芝、商社の双日、およびニオブ(Nb)の生産および販売最大手であるブラジルCBMM(カンパニア・ブラジレイラ・メタルジア・イ・ミネラソン)の3社は2021年9月24日、ニオブチタン系酸化物(TiNb2O7:NTO)を負極活物質として用いる次世代リチウム(Li)イオン電池(LIB)の試作セルの開発を完了し、商業化に向けた共同開発契約を締結したと発表した。電気自動車(EV)向けLIBとして2023年度の商業化を目指すという。商業化が順調に進めば、EV向けLIB市場にとってのゲームチェンジャーとなる可能性がある。

NTOを負極活物質に用いたLiイオン2次電池とNTOの粉末
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NTOを負極活物質に用いたLiイオン2次電池とNTOの粉末
(写真:東芝)

 NTOを負極に用いるLIBは東芝が2017年に発表した次世代LIBの技術で、特徴は大きく3つ。(1)6分で90%充電できるなど超急速充電に対応する、(2)充放電サイクル寿命が2万5000回以上と非常に長い、(3)負極活物質の電位がLiに対して1.6Vも高く、Liイオンが析出することによるデンドライトが生じないため安全性が高い、である。

 東芝はこれまで、負極活物質にチタン酸リチウム(Li4Ti5O12:LTO)を用いたLIB「SCiB」を製造してきた。SCiBには上記の(2)や(3)と同様な特徴があることで、定置型蓄電池のほか、新幹線車両「N700S」、そしてマイルドハイブリッド車(MHEV、電池の電力を発進や加速時のアシストだけに使う車両)への搭載が進んでいる。

 ただし、SCiBはセルの重量エネルギー密度が89~96Wh/kg、体積エネルギー密度で200Wh/L弱と一般の高容量LIBの約1/3しかないという課題があり、本格的なEV向けには使いにくいという課題があった。

 一方、NTOの電位はLTOとほぼ同じで、LTOの優れた点を引き継ぎながら、容量密度は黒鉛の2倍、LTOの約3倍と高い。LTOの代わりにNTOを負極活物質に用いた次世代SCiBはエネルギー密度がSCiBの約2倍で、高容量LIBとの差を大幅に縮めた。

NTOおよびこれまでLIBの負極に用いられてきた活物質材料の容量密度や電位の比較
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NTOおよびこれまでLIBの負極に用いられてきた活物質材料の容量密度や電位の比較
(図:東芝)
NTOを負極に用いた電池(次世代SCiB)と既存のSCiBのエネルギー密度やパワー(出力)密度
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NTOを負極に用いた電池(次世代SCiB)と既存のSCiBのエネルギー密度やパワー(出力)密度
(図:東芝)

 最近、EVでも安全性や低コスト性重視の立場からセルの重量エネルギー密度が約200Wh/kgと、高容量LIBより低いリン酸鉄(LFP)系LIBを採用する動きが広がっている。今回のNTO系LIBは、エネルギー密度でLFP系LIBとほぼ同等、急速充電性能や充放電サイクル寿命の点ではLFP系LIBを大きく上回るとみられ、EVを含む幅広い用途で使われるようになる可能性は十分ある。

NTO負極を用いたLIBの主な想定用途
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NTO負極を用いたLIBの主な想定用途
(図:東芝)

新型EVに搭載して実証へ

 東芝と双日、CBMMの3社は、2018年6月時点でこのNTO負極材料について共同開発契約を結んでいた。今回の3社の発表は、これまでのセルの開発から、量産プロセスの確立や早期の市場投入へと協業のフェーズを1段階先に進めるというものだ。

 より具体的には、CBMMがドイツTraton(トレイトン)グループのブラジル法人の1社〔Volkswagen Caminhoes e Onibus(フォルクスワーゲン・カミニョイス・イ・オニブス)〕と提携。NTO負極のLIBを搭載する新型商用EVを設計し、電池の特性や車両運行データの収集を通して、このEVと電池を実証する。Tratonは、ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン)傘下でトラックやバスなどを扱う。東芝、およびCBMMの日本市場向け総代理店である双日もこの実証に参加する。