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 国内自動車メーカー、自動車部品メーカー10社は、モデルベース開発(MBD)を自動車産業に広げるための組織「MBD推進センター」を発足させたことを発表した()。参画するのは、SUBARU(スバル)、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、マツダの自動車メーカー5社と、アイシン、ジヤトコ、デンソー、パナソニック、三菱電機の自動車部品メーカー5社である。自動車産業界にMBDを普及させ、MBDのモデルを流通させることで、日本の強みである擦り合わせのデジタル化を目指す。

図 MBD推進センターのオンライン説明会に登場した関係者
図 MBD推進センターのオンライン説明会に登場した関係者
左から順に、同センター企画統括委員会委員長の原田靖裕氏(マツダ)、同センターステアリングコミッティ委員長の人見光夫氏(同)、同委員の水山正重氏(パナソニック)、同委員の田中昭二氏(三菱電機)。オンライン説明会の画面をキャプチャーした。
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 同センターのステアリングコミッティ委員長を務めるマツダ シニアイノベーションフェローの人見光夫氏によれば、ものを造って評価する場合、少し規模の大きなものでは数カ月を要する。MBDを使ってモデルで評価すれば、翌日に結果を得ることも可能という。100年に1度の大変革期と言われる自動車業界では、「カーボンニュートラルやCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング/サービス、電動化)への対応などやらなければいけないことがものすごく増えている」(同氏)。開発の効率化は不可欠であり、そのためにMBDの普及が必要という。

 ただ、MBDの活用は現在、主に大手の自動車・自動車部品メーカーにとどまっており、中小の自動車部品メーカーまで広がっていない。また、MBDのモデルは複数のモデルを組み合わせる際のインターフェースなど、モデル流通のためのルールが統一されておらず、企業の壁を越えてのモデル共有の障壁になっている。例えば、モーターとタイヤのインターフェースとしては、「信号」を用いるもの、「トルクと回転数」を用いるもの、「数式」を用いるものなどがあるという。

 そこで、同センターでは、MBDの教育活動を展開しつつ、モデル流通のためのルールやインフラを整備し、MBDの普及とモデル流通を促すことを目指す。モデル流通のルールを統一できれば、自動車部品メーカーは共通のモデルを取引先各社に納められるようになる。自動車メーカーは、さまざまな取引先から受け取ったモデルを組み合わせてシミュレーションを実施できるようになり、開発を効率化できる。

 同センター企画統括委員会委員長でマツダ統合制御システム開発本部技監の原田靖裕氏によれば、まず流通を目指すのは、つなぎ目(インターフェース)のルールは統一してあるが中身の技術ノウハウは見えないようになっている「ジェネリックモデル」だという。

 同センターでは、さらに各社が共通の課題を持ち寄り、その解決を図る活動も行う。