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 民間企業が気象衛星を開発して運用する。そんな日本初のプロジェクトを人工流れ星の開発で知られる宇宙ベンチャーのALEが開始する。2021年9月27日、同社はNTT、理化学研究所、国立天文台が参加する産学連携のプロジェクト「AETHER(アイテール)」を発足した。参加組織は気象衛星開発についての覚書と共同研究・実験契約を同日に締結した。

オンライン記者会見の登壇者。右端がALE代表取締役社長/CEOの岡島礼奈氏
オンライン記者会見の登壇者。右端がALE代表取締役社長/CEOの岡島礼奈氏
(写真:ALE)
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 近年、気候変動の影響により、日本のみならず世界中で自然災害が深刻度を増している。ALEがAETHERを発足させたのは、宇宙を活用して自然災害の被害の低減に貢献したいという思いからだという。具体的には、各参加機関が得意技術を持ち寄って大気中の水蒸気が放射する微弱な電磁波を、マイクロ波帯を使って検知するマイクロ波サウンダーというセンサーを開発。それを搭載した気象衛星で大気データを取得し、気象予報の精度向上を図る。雨は大気中の水蒸気が集まることで起きる現象であるため、マイクロ波による水蒸気の観測は予報精度向上にとって非常に重要だという。

 こうしたマイクロ波を使った気象観測は、現状、政府の大型衛星が担っている。ただし、大型衛星は1機あたりの開発費が数百億円と膨大なうえ、運用にも高いコストを要する。しかも、観測頻度は6時間に1回で、線状降水帯の発生などを予測するにはこの頻度では不十分だという。

 AETHERでは既にコモディティー化している超小型衛星の共通規格であるCubeSatを採用することでコストを大幅に抑える。1機当たりのコストは数億円と約1/100に下がるという。CubeSatは1U(10cm×10cm×10cm)が基本ユニットでそれを組み合わせて構成するが、6Uのサイズを想定している。それに向けて、大型衛星に搭載されているマイクロ波サウンダーを小型化する。

 観測頻度は軌道上に複数を打ち上げてコンステレーション化することで現状より高める。打ち上げる機数は今後のシミュレーションとコストの試算で決めていくが、10機体制では地球全体を2時間に1回、20機体制では1時間に1回観測できるという。

AETHERプロジェクトの全体像と役割分担
AETHERプロジェクトの全体像と役割分担
(図:ALE)
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 参加機関の役割分担はこうだ。小型マイクロ波サウンダーの核となるコンポーネントは、NTTの高周波デバイス技術と、国立天文台の電波天文学で培った観測機器技術を持ち寄って開発する。観測データと気象モデルをつないで正確な予報を実現する技術である「データ同化」と気象予報を実行するソフトウエアの開発は大型計算機システムを用いた気象学に知見のある理研が担当する。衛星開発や運用、AETHERの全体統括をALEが担う。

 開発スケジュールについては、23年ごろに地上での技術実証、25年ごろに宇宙での技術実証を行い、それ以降に観測データの提供から気象予報を基にしたソリューションサービスの提供まで、気象関連サービス事業を展開していくとしている。