JFEスチールは、データサイエンス技術を生かして製鉄所の設備の異常予兆を検知するシステム「J-dscom」を全地区の熱延工場に展開した。設備トラブルを未然に防止し、生産性の向上を図る。西日本製鉄所(倉敷地区)では、年間で50時間以上のトラブル抑止効果を挙げているという。

* JFEスチールのニュースリリース

 同システムは、電流・圧力・流量・温度・振動といった操業状態を示す数百の変数項目を効率的かつ網羅的に解析し、正常時の基準値からの外れ度合いを「異常度」として指標化する(図1)。これにより、過去に経験したトラブルだけでなく、想定外のトラブルも防げる。設備全体の監視の他、モーターや油圧計などの機器レベルの監視にも対応可能。以前から実施している、計器の指示値の上下限チェックで異常をとらえる監視にも使える。

図1 「J-dscom」による異常予兆検知の流れ
図1 「J-dscom」による異常予兆検知の流れ
(出所:JFEスチール)
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* 2019年11月14日付、JFEスチールのニュースリリース

 さらに、導き出した異常度を、その経時変化の大きさに応じてカラーマップ表示する機能も備える(図2)。製造現場で異常度を把握しやすく、異常が発生している装置と部位を短時間で特定し、適切な保全アクションにつなげられるとしている。

図2 カラーマップによる多点監視
図2 カラーマップによる多点監視
(出所:JFEスチール)
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 同社はJ-dscomを開発・導入する以前は、設備トラブルが発生する度にそのトラブルに特化した異常監視モデルを構築し、再発防止を図ってきた。しかし、導入から数十年が経過した設備が増え、想定外のトラブルが増加しているため、従来の方法では十分な異常抑止効果を得られないおそれが高まってきた。そこで、想定外のトラブルも予兆可能なシステムとしてJ-dscomを構築した。

 同社は、2018年度に西日本製鉄所(倉敷地区)の熱延工場へJ-dscomを導入。生産量で3万t以上に相当する、年間50時間以上のトラブル抑止効果を確認した。その後、西日本製鉄所(倉敷・福山地区)や東日本製鉄所(千葉・京浜地区)でも同システムを採用。全地区で共通のシステムを利用し、異常診断モデルなどを共有しやすくすることで、全社レベルで最適なモデルの構築を進める。さらに今後は、製銑(せいせん)や製鋼などの製造プロセスにも同システムを展開する計画だ。