「設計から実現するプライバシーということをまず考えている」。トヨタ自動車傘下で、静岡県裾野市にスマートシティー「ウーブン・シティ」を建設中のウーブン・プラネット・ホールディングス最高経営責任者(CEO)のJames Kuffner(ジェームス・カフナー)氏は、ウーブン・シティの建設に当たって、プライバシーの保護を最重視する姿勢を改めて表明した(図)。
スマートシティーについては、米Google(グーグル)系の、米Alphabet(アルファベット)傘下のスマートシティー開発会社であるSidewalk Labs(サイドウォークラボ)が2020年5月、カナダのトロント市で進めていた開発から撤退を発表している。同社は、「前例のない経済的な不確実性によって、プロジェクトを財政的に成り立たせるのが難しくなった」と発表しているが、プライバシー侵害の危険性から市民の理解が得られにくくなったためと見る向きが多い。
ウーブン・プラネット・ホールディングスのカフナー氏は、データの活用を考えたときには、やはり最先端のセキュリティーとプライバシーの保護が必要とし、「プライバシーを設計の中に組み込む」と説明した。さらに、「設計によって担保されるプライバシーは1つの差別化要素になると思っている。我々には、プライバシーに対する強いコミットメントがある。それによって地域社会からの信頼を得たい」と語った。「我々が全ての技術の開発において目指していることは、透明性の確保。それからデータの良いオーナーシップの形を築いていくことだ」とも続けた。
同氏によれば、ウーブン・シティのプロジェクトは、スケジュール通りに進行している。現在、造成工事を進めながら、同社の日本橋オフィスやトヨタの他の施設で、モビリティーやエネルギー、食や農業に関する新しい技術を開発しているという。加えて、仮想空間で実空間を再現するデジタルツインの技術の開発も進めており、それによって多くのサービスを加速・最適化しようと取り組んでいるとする。
同氏は「デジタルツインの技術はまだ進化の途上」としながらも、日本橋のオフィスでは既に、「ウーブン・シティがどうなるかをVR(仮想現実)で体験できる」状況だという。同社では、同技術を特に設計デザインやモデリングに活用し、それによってより良い意思決定につなげていこうとしている。
ウーブン・シティの第1期の区画は、「24~25年まで工事を続け、その後に開業する」(同氏)。現在は造成工事中だが、「22年からは建屋の建設に入る」と同氏は明かす。また、裾野市が進める「裾野市北部地域まちづくり基本構想」とも連携し、岩波駅周辺に小型のモビリティーを走らせることなども計画している。