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 「半導体の世界需要が爆発的に増加する一方で、チップの設計から製造能力に至るバリューチェーンにおいて欧州のシェアが縮小している。我々は最先端チップの製造をアジアに依存している。これは競争の問題だけでなく、技術主権の問題でもある」

 欧州委員会委員長のUrsula von der Leyen氏は2021年9月15日(現地時間)、一般教書演説の中で「European Chips Act(欧州半導体法)」の策定を発表した。この背景には世界的な半導体不足がある。同氏は冒頭のように強い危機感を示し、EU(欧州連合)域内での半導体の自給に向けて法制化に取り組むとした。

 欧州半導体法に関する欧州委員会のブログには、「半導体不足は欧州の経済、雇用、さらにレジャーにさえも大きな影響を及ぼしている。この不足の状況はしばらくは続くだろう。これは単に需要と供給の問題ではない。半導体は世界の技術競争の中核であると同時に地政学的な利害関係の中心だ」と書かれている。

 欧州半導体法は、21年7月に発表されたもう1つの半導体イニシアチブである「the European Alliance on Processors and Semiconductor technologies」をベースとして構築される。主に、以下の3つの要素からなる。①半導体に関する研究戦略、②半導体の生産能力などを強化するための共同計画、③国際協力と連携のためのフレームワーク--である。

 欧州委員会によれば、世界の半導体業界における欧州の主な強みは研究開発力にある。ベルギーのimec、フランスのCEA-Leti(フランス原子力・代替エネルギー庁電子情報技術研究所)、ドイツのFraunhofer-Gesellschaft(フラウンホーファー研究機構)といった世界的な研究機関を擁するためだ。実際、これらの研究機関での成果は、世界的に活用されているという。そこで、欧州の研究機関での取り組みをベースに半導体研究戦略を構築するのが①である。

 ②は、半導体サプライチェーンの監視とレジリエンス(回復力)のサポートに関する計画の構築である。最終的には、2nmもしくはそれ以下の最先端プロセス、および電力効率に優れた半導体を生産する欧州のメガファブ(巨大工場)の建設をEUが支援するとしている。

 ただし、現状の半導体のサプライチェーンを鑑みれば、欧州域内だけで競争力が高いものを構築しようとするのは現実的ではない。欧州委員会も「すべてをここ欧州で生産しようという考えではない」としている。目的は、③によって欧州での半導体生産をもっと盛んにして、1つの国や地域への過度の依存を減らすサプライチェーンの多様化にある。そのために、「我々は先端半導体の生産能力を増やすことに寄与する海外投資を歓迎する」(欧州委員会)としている。