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 東芝は2021年10月22日、チップベースの量子暗号通信システムを開発したと発表した。これまで量子暗号通信には大規模な光学部品が必要になっていたが、主要構成機能をチップ化することで小型化した。同社は24年の実用化を目指し、IoT機器によるモニタリングや工場間でのデータ秘匿など量子暗号通信の用途拡大に向ける(図1)。

図1 東芝の「チップベース量子暗号通信システム」
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図1 東芝の「チップベース量子暗号通信システム」
上段左から「量子送信チップ」(2mm×6mm)、「量子受信チップ」(8mm×8mm)、「量子乱数チップ」(2mm×6mm)。それぞれ従来の光学部品から小型化した。(出所:東芝)

 量子暗号通信は、光ファイバーで結んだ拠点間において、光子に暗号鍵情報を載せて送受信する仕組み。量子力学的な特性を用いて盗聴者による盗み見を確実に検知できるため、量子時代の新たな暗号技術として世界で実証が進みつつある。

 東芝は量子暗号通信システムの3つの主要構成を光集積回路化し、「チップベース量子暗号システム」を構築した。チップ化したのは、(1)量子暗号鍵の送信機、(2)同受信機、(3)暗号鍵を生成するために必要となる乱数発生機。試作品の外形寸法は、量子送信チップが2mm×6mm、量子受信チップが8mm×8mm、量子乱数チップが2mm×6mmである。「標準的な半導体製造技術を用いて1枚のウェハー上に数百のチップを一度に製造することで、量産することが可能」(同社)という(図2)。

図2 「チップベース量子暗号通信システム」の概要図
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図2 「チップベース量子暗号通信システム」の概要図
東芝は、実証実験でリアルタイムの暗号通信に成功した。(出所:東芝)

 東芝によれば、主要構成を光集積回路化した量子暗号通信システムは「世界初」(同社)。同システムを小型化・低消費電力化することで、工場間での設計データの共有の秘匿化などに適用範囲を拡大する。これまでは大規模なシステム構築が必要だったため、金融分野や医療分野での活用を見込んでいた。

 東芝は実証実験で、チップベース量子暗号通信システムを使って50kmの光ファイバーによる暗号鍵配送を実証した。さらに10kmの光ファイバーを使った実証実験では、平均470kビット毎秒の暗号鍵生成速度を実現できたという。「都市内通信を想定した実証実験で、ビデオ通話での活用が可能なレベルの暗号鍵生成速度を実現できた」(同社)と語る。