米Enpower Greentechと日本法人のEnpower Japan、およびソフトバンクは2021年10月25日、高いエネルギー密度の金属リチウム(Li)電池「LMB-EP500」を開発したと発表した。重量エネルギー密度は520Wh/kgと既存のLiイオン2次電池の約2倍、体積エネルギー密度は1100Wh/L、充放電サイクル寿命はまだ測定中だが、「サイクル100回時(充電0.2C、放電0.5C)の容量維持率は88%」(Enpower Japan)だという。

Enpower Greentechとソフトバンクなどが共同開発した重量エネルギー密度が520Wh/kgの金属リチウム電池
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Enpower Greentechとソフトバンクなどが共同開発した重量エネルギー密度が520Wh/kgの金属リチウム電池
容量は3600mAh(出所:Enpower Japan)

 Enpower Japanは、Enpower Greentechの日本法人で主に研究開発を担っているが、東京工業大学発のベンチャー企業でもある。Enpower Greentechらは2021年3月にも、重量エネルギー密度が約450Wh/kgのLi金属電池を発表している。

 当時のセルでは負極の金属Liをコーティングしておらず、サイクル寿命は100~200回だった。今回はコーティングを施した重量エネルギー密度520Wh/kgや400Wh/kgの2次電池を開発した。

Enpower Japanが2021年9月末の展示会「スマートエネルギーWeek 2021 国際二次電池展」(東京ビッグサイト)に出展した400Wh/kg、3500mAhの電池
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Enpower Japanが2021年9月末の展示会「スマートエネルギーWeek 2021 国際二次電池展」(東京ビッグサイト)に出展した400Wh/kg、3500mAhの電池
(出所:日経クロステック)

 400Wh/kgの電池では、充放電サイクル寿命が400回で容量維持率80%と、カメラ向け蓄電池などの民生品全般、あるいはエネルギー密度優先のドローンやHAPS(High Altitude Platform Station)と呼ばれる成層圏を飛ぶ無人航空機などであれば実用化可能な水準になっている。

520Wh/kgの電池の第3者機関による測定結果の一部
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520Wh/kgの電池の第3者機関による測定結果の一部
より詳細なデータも公開可能だとする(出所:Enpower Japan)

 520Wh/kgの電池の諸特性は「ソフトバンク次世代電池Lab」を含む複数の第3者機関で複数の電池サンプルを用いて検証したとする。具体的には、寸法が110mm×72mm×2.6mm、重さは27.3g。電流容量が3600mAh(3.60Ah)、定格電圧が3.82V、エネルギー容量は13.8Whだとする。想定する充電時間は、最速で0.2C(約5時間)、放電は最速1C(約1時間)で、いわゆる急速充電はできない仕様だ。充放電サイクル寿命もやや伸び悩んでいるもようで、現時点では用途は限定的になる。