日本を代表する自動車レースである「全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)」を主催する日本レースプロモーション(JRP)は2021年10月25日、ホンダ、トヨタ自動車と共同で記者会見を開き、デジタルシフトや環境負荷低減を軸とした新プロジェクト「SF NEXT 50」を発表した。
デジタルシフトについては、SFの娯楽性を高めるために新しいデジタル基盤を構築する。レース中の車両に搭載しているカメラ映像をリアルタイムで配信したり、ドライバーとチームスタッフの無線音声を配信したりして、ファンがより臨場感ある形でレースを楽しめるようにする。クルマの車速や位置情報、オーバーテイクシステム(一時的にエンジン出力を上げられるSF独自の仕組み)の状況など様々な車両データも配信する。詳細は2022年1月に発表する。当初は無料サービスとするが、将来的に有料化し、収益源とする方針だ。
最高時速300キロメートル程度で高速移動するレース車両からカメラ映像をリアルタイムに収集・配信するのは技術的なハードルが高い。
JRPの上野禎久取締役SF NEXT 50プロジェクトリーダーは「最初からテレビ品質の映像を安定配信するのは難しい。当初は品質を抑えてでも全車両の映像を楽しめる網羅性を重視し、徐々に品質向上を目指す」と述べた。
レース中の無線音声を配信すると、各チームの秘密のやり取りがファンだけではなく他チームにも筒抜けになる。トヨタ勢のエースドライバーである小林可夢偉選手(TOYOTA GAZOO Racing/KCMG)は「無線を聞かれることを前提としてレース前に作戦を話し合っておくことになる。レース中は思ったことをそのまま言うのではなく、他チームに分からないようにごまかして言うだろう。F1ではそれをずっとやってきている」と述べた。ホンダ勢のエースドライバーである山本尚貴選手(Honda Racing/TCS NAKAJIMA RACING)は「あるドライバーが言っていることが本当かもしれないし、裏があるかもしれない。複雑にはなるが、それがスポーツとしての面白さにつながるのではないか」と述べた。