売り上げも営業利益も過去最高へ──。ダイキン工業は2021年11月4日、2022年3月期(21年度)通期の見通しを発表した。売上高は2兆9300億円、営業利益は3000億円と、共に過去最高となる見込み。同社社長兼最高経営責任者(CEO)の十河政則氏は「3000億円は最低の必達ライン。さらに上積みを狙う」と、同日開いた21年度第2四半期(21年4~9月)の決算発表で語った。
「弾切れ」の他社を横目にシェアアップ
21年8月に公表した予想を上回る、今期2度目の上方修正。競合企業と比べても好業績である理由について、ダイキン工業は2つの理由を挙げる。1つは、「弾切れ」(十河氏)を起こさなかったから。ここで、弾とは「部品」および「製品(エアコン)」のことだ。
前年(20年)に新型コロナウイルス感染症の世界的なまん延の影響を受け、サプライチェーンの寸断が発生した。これを重大な問題と捉えた同社は、サプライチェーンの再構築に1年前から取り組んできた。特に、電子部品のサプライチェーンの再構築に対していち早く手を打った。
その結果、半導体を含めた部品の供給不足を起こさずに「前線に弾(部品)を送ることができた」(十河社長)。すなわち、ダイキン工業は市場の需要に応じて必要な分の部品(弾)を生産ラインに供給でき、それによって組み立てた製品(弾)を市場に投入できた、ということだ。
これに対し、「競合企業は部品の供給不足を起こし、市場への弾(製品)切れを起こした。これがダイキン工業のシェアアップにもつながった」(十河社長)。
もう1つの理由は、「差別化商品」をスピード投入できたからだ。ダイキン工業は、顧客のニーズを捉えた、他社製品と比べて付加価値の高い製品を開発する速度を上げた。これも1年前から取り組んできたことが実を結んだ格好だ。
恒大集団のリスクも織り込んでフル生産
21年度第2四半期の業績も、売上高が1兆5589億円、営業利益が1927億円で、共に過去最高を記録した。世界中で売り上げを伸ばしたが、中でも好調だったのは、欧州市場と中国市場。欧州市場はヒートポンプ暖房の売り上げが好調で、売上高が前年比で39%伸びた。中国市場は個人消費が住宅用市場を下支えした他、リアルとオンラインを組み合わせた販売活動の強化が奏功。売上高を前年比で34%伸ばしている。
このうち、中国市場に関してはリスク要因についても十河社長は言及した。そのリスクは2つある。1つは、中国恒大集団の経営危機だ。中国市場では今、不動産大手の中国恒大集団が経営危機にあり、それが市場に与える影響について懸念されている。
この点についてダイキン工業は、「中国恒大集団との取引は小さく、影響は限定的と見ている」と同社長は語った。ただし、中国恒大集団の経営危機が不動産投資の減速に波及する可能性もあり、その点を注視していくという。
もう1つのリスクは、中国市場の電力不足である。中国当局の要請に従い、ダイキン工業は中国・蘇州にある家庭用エアコンの工場を21年9月27~30日の4日間、臨時休業した。この休業自体は同社の業績にそれほど大きな影響を与えなかったものの、今後も起きる可能性があるとダイキン工業は見る。
そこで、同社は電力が供給されている今、「在庫を確保してフル生産」(十河社長)中だ。こうして電力不足のリスクをできる限り抑え、市場への「弾切れ」を防ぐ考えだ。