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 三菱重工業は2021年11月8日、名古屋航空宇宙システム製作所飛島工場(愛知県・飛島村)で出荷準備作業中のH-IIAロケット45号機のコア機体(1・2段目)を公開した(図1、2)。11月12日に出荷し、16日に射場(種子島宇宙センター)に搬入する。他拠点で生産した固体ロケットブースター(SRB-A)、衛星フェアリング部を射場で組み付け、12月21日に打ち上げる予定。ミッションは英Inmarsat(インマルサット)の通信衛星「Inmarsat-6 F1」(質量約5.5トン)の静止遷移軌道への投入で、海外顧客からの5件目の受注案件だ。

図1 H-IIAロケット45号機の1段目
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図1 H-IIAロケット45号機の1段目
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図1 H-IIAロケット45号機の1段目
打ち上げ時に上となる方向から下方向を見た様子(左)と、下から上を見た様子(右)(出所:日経クロステック)
図2 H-IIAロケット45号機の2段目
図2 H-IIAロケット45号機の2段目
搭載するInmarsat-6の黒地のロゴが描かれている。(出所:日経クロステック)
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 コア機体はほとんどの容積を燃料タンク(液体酸素タンク、液体水素タンク)が占める。タンクの側壁はアルミニウム合金板の削り出しで造り、厚さ17mmの素材の一部を三角形の網目状に残し(アイソグリッド構造)、ほとんどの部分を厚さ2mmにまで薄くする(図3)。削り出した部材を曲げて、互いに溶接して外側に断熱材を張る。燃料を充填した時点で、タンク総質量のうち部材が占めるのは4%にすぎず、あとの96%は燃料という。

図3 タンクを構成する部材の一部
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図3 タンクを構成する部材の一部
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図3 タンクを構成する部材の一部
アルミニウム合金板を削り出したタンク側壁用部材(左)と断熱材(右)。(出所:日経クロステック)

 H-IIAロケット45号機の型式名は「H2A204」で、末尾の「4」はSRB-Aが4本付くことを示す。打ち上げ2分4秒後にSRB-Aのうち2本、その3秒後にもう2本を分離し、6分46秒後に第1段と第2段が分かれる。11分23秒後に第2段エンジンをいったん停止して慣性で赤道付近まで飛行したのち、再度第2段エンジンを約4分間燃焼して加速し、26分20秒後に衛星を高度322kmで分離する。静止遷移軌道の遠地点は約6万5000kmで、このあと衛星は遠地点を下げて近地点を上げる軌道修正を経て、高度約3万6000kmの静止軌道に入る。