積水化学工業は2021年11月11日、同社の製品・技術を通じた社会課題解決についてオンライン会見を開催した。その中で脱炭素につながるイノベーション製品として注目を集めたのが「ペロブスカイト太陽電池」だ。軽量でフレキシブルなため、従来の太陽光パネルでは設置が難しい、ビルの壁面や自動車の上にも設置できる。同社代表取締役社長の加藤敬太氏は「実証実験を経て、2025年に事業化したい」と意欲を見せた。
一般的な太陽光パネルが発電にシリコンを使うのに対し、ペロブスカイト太陽電池はペロブスカイトと呼ぶ結晶構造を持つ材料を用いて発電する。ペロブスカイト結晶の発電層膜は薄くても変換効率が高いため、材料をフィルム上に塗布することで、軽量かつフレキシブルな太陽電池を造れる。軽さは「東京ドームのドーム上にも設置可能」(加藤社長)と言う程だ。東芝なども開発を進めている。
積水化学は同社が培ってきた封止技術や成膜技術を生かして、ペロブスカイト太陽電池を開発した。加藤社長は「他社に先駆けて屋外での実証実験を実施し、屋外で10年相当の耐久性を確認した」と胸を張る。今後15年、20年と耐久年数を向上させる目標だ。
同社はロール・ツー・ロール*方式の製造プロセスを採用しており、30cm幅の製品を開発した。汎用の1m幅の製造ラインの開発にも業界で初めて着手したという。
発電効率は「21年7月時点で14.3%を達成し、今後15%超を目指す」(加藤社長)。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が募集するグリーンイノベーション基金事業にも応募し、官民で協力して開発に取り組む考えだ。
今後の製品の展開について、加藤社長は「ペロブスカイトはビルの壁面や重量制限のある屋根にも設置が可能で、適用部位が圧倒的に増える。シリコンの太陽電池だけではまかなえない電力需要を補えるだろう」と期待感を示した。自動車への適用についても「燃費性能を保てる軽量な電池への期待は大きい」述べた。
積水化学は50年に温暖化ガス(GHG)排出量をゼロにする目標を掲げている。加藤社長は、「エネルギー消費量を削減する『エネルギー消費革新』の段階から、再エネの積極活用やイノベーションによる燃料転換を実施する『エネルギー調達革新』の段階に移行した」と語る。実際、同社は自社が販売した住宅で発生する太陽光発電の余剰電力の買い取りなども積極的に進めている。既に100%再生可能エネルギー由来の電力に転換した事業所は国内外で8カ所を数える。