調査会社の米BloombergNEFは2021年11月15日、世界全体におけるエネルギー貯蔵システム(ESS)の導入量が2030年末までに累計出力で358GW、累計容量では1028GWhに達するとの見方を発表した。揚水発電システム以外のさまざまなESSを対象とする。2020年末時点でのESSは出力が17GW、容量が34GWhで、10年で容量が約30倍になる計算だ。「以前からESSの大量導入が予測されてきたが、今になって業界にその“準備”が整い、まさに導入ラッシュが始まりつつある。2020年代はESSの10年になる」(BloombergNEF)。

世界のエネルギー貯蔵システム(ESS)の容量は2030年に計1TWhに
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世界のエネルギー貯蔵システム(ESS)の容量は2030年に計1TWhに
BloombergNEFによるESSの市場予測。縦軸は導入システムの出力の累計値、2030年に358GWになるとする。「Buffer」は現時点ではBloombergNEFが予測しきれない用途や市場だとする。(APAC:アジア太平洋地域、MENA:中東と北アフリカ、EMEA:欧州、中東、アフリカ。出所:BloombergNEF)

 ESSには、定置型蓄電池の他、圧縮空気エネルギー貯蔵システム(CAES:Compressed Air Energy Storage)や蓄熱システムなどさまざまな実現手法があるとするが、支配的になるのは蓄電池だという。「価格競争力、サプライチェーンなどの点で少なくとも2030年代までは、蓄電池がESSの大部分を占めることになる」(BloombergNEF)。

主役はリン酸鉄(LFP)系リチウム(Li)イオン2次電池(LIB)に

 さらに蓄電池技術の内訳としては、(1)リン酸鉄(LFP)系LIB、(2)NCM(Ni-Cu-Mn)系LIB、(3)ナトリウムイオン2次電池(NIB)などがある。定置型蓄電池としては2021年に初めてLFP系の導入量がNCM系を上回る見通しで、今後少なくとも2030年までの主流システムになるとする。

揚水発電も過去例にない増設ラッシュ

 ちなみにBloombergNEFが今回の予測に含めなかった揚水発電システムは、米国エネルギー省(DoE)調べでは2020年末時点において世界全体で約158GWhが導入されている。実は、導入量世界1位は最近まで日本(DoE調べで約28GWh)だったが、今は中国に抜かれている。

 揚水発電システムは、電力貯蔵の手法としては非常に古く、増設の動きは長らく鈍かった。しかし他のESSと同様、この数年で猛烈な増設ラッシュが始まっており、現時点で建設中および建設予定のシステムの合計は世界全体で約218GWh(DoE調べ)で、過去100年の導入量累計を大きく超えた。ただ、蓄電池はそれを大きく上回る勢いで大量導入が始まっている。