GSユアサは2021年11月15日、重量エネルギー密度が370Wh/kg以上のリチウム硫黄(Li-S)2次電池のセルを開発したと発表した。このセルは、電流容量が8Ah、定格電圧が1.8V、重さが39gである。パウチ部分を含む寸法は、縦85mm×幅110mm×高さ5mmである。体積エネルギー密度は「非公開」(GSユアサ)だが、包装を除いたセルの推定実寸と、エネルギー容量からの推定で、400~500Wh/L程度とみられる。

370Wh/kgのLi-S2次電池を開発した
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370Wh/kgのLi-S2次電池を開発した
GSユアサが開発したLi-S2次電池のセルの外観。(出所:GSユアサ)

 サイクル寿命は、「具体的な数値は非公開だが、まだ改善が必要だと考えている」(GSユアサ)とする。充放電効率も「非公開」(GSユアサ)である。同社では、将来の電動ハイブリッド型航空機用の軽量電池などでの活用を見込んでいる。

 Li-S2次電池は、正極活物質に理論容量が高いS、負極に金属Liを使った2次電池である。理論上の重量エネルギー密度が900~1000Wh/kgと、Liイオン2次電池から大幅に高められる。ただし、実用化に向けて課題がある。大きく2つあり、(1)反応中間体の多硫化リチウム(Li2Sx)が電解液に溶出してしまい容量低下すること、(2)絶縁体であるSが電極反応に寄与しにくいこと、だ。

 GSユアサは関西大学 教授の石川正司氏の研究室と共同で、これらを改善したLi-S2次電池を開発した。(1)のLi2Sx溶出の課題は、電解液に炭酸ビニレン系材料を使うことで、従来から溶出量が減少したという。この電解液を使うと正極との界面に被膜が形成されて、Li2Sxと電解液が接触しにくくなるためだ。

 (2)のSの電極反応の課題は、Sを独自の多孔性炭素(C)粒子の細孔内に担持して導電性を高めて対処した。細孔に担持されたLi2Sxは、電解液と接触しにくくなるので、(1)の課題の改善にもつながる。ただ、こうした施策をもってしてもサイクル寿命は伸び悩んでいるといい、さらなる向上に向けた新技術が必要だとしている。

 GSユアサは、このセルを10~20個並べたモジュールを作成し、Li-S2次電池用に開発したBMS(バッテリーマネジメントシステム)による性能評価を開始した。2023年までに重量エネルギー密度を500Wh/kgまで高めることが目標だという。