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 金融庁は2021年11月26日、みずほ銀行が2021年2月から9月にかけて起こした8回のシステム障害を踏まえて、同行とみずほフィナンシャルグループ(FG)に対して業務改善命令を出した。勘定系システム「MINORI」の運用弱体化が障害の原因だったとし、システムリスク管理体制の整備や企業風土の変革などを求めた。

 同日、財務省もみずほ銀行に対して、外国為替及び外国貿易法(外為法)に違反したとして是正措置命令を発令した。みずほ銀行では2021年9月30日に、外為送金取引を支援する「統合決済管理システム(ISCS)」でシステム障害が発生し、マネーロンダリング対策の確認が不十分のまま外為送金が行われた。財務省は同行の役職員に外為法令の知識不足があったほか、外為法順守のためのシステム管理体制に脆弱性があったとし、改善・再発防止策を策定するよう求めた。

 金融庁や財務省の処分を受けてみずほFGとみずほ銀行は同日、経営陣の引責辞任を発表した。2022年4月1日付などに辞任するのは、みずほFGの坂井辰史社長、みずほ銀行の藤原弘治頭取、CIO(最高情報責任者)である石井哲みずほFG執行役兼みずほ銀行副頭取、コンプライアンス統括グループ長である高田政臣みずほFG執行役兼みずほ銀行常務執行役員である。

システムの専門性やIT現場の実態を軽視

 金融庁は一連のシステム障害が発生した直接の原因として3点挙げた。「開発や障害対応における品質を確保するための検証の不足」「MINORIの保守管理体制の未整備」「危機対応に関する訓練や研修の不備」――である。

 さらにその背景には経営陣などにおけるガバナンス上の問題があると指摘した。「システムに関するリスクや専門性の軽視」「IT現場の実態軽視」「顧客影響に対する感度の欠如」「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない姿勢」などが、一連の問題の「真因」だとした。

 金融庁は、これら「真因」は、みずほ銀行が2002年と2011年に起こした大規模システム障害にも通底すると指摘。みずほ銀行やみずほFGにおいて「自浄作用が十分に機能しているとは認められない」ともした。 そのうえでみずほ銀行とみずほFGに対して、システム障害の再発防止策やシステムの安定稼働に必要となる経営管理体制の整備を求めるとともに、企業風土の変革を求めた。

 みずほ銀行とみずほFGは業務改善計画を策定し、2022年1月17日までに金融庁に提出するほか、その後も3カ月ごとに業務改善計画の実施状況などについて金融庁に報告する。財務省に対しては2021年12月17日までに再発防止策などを報告し、3カ月ごとに実施状況を報告する。