液系リチウムイオン電池の場合、液漏れの可能性や、可燃性の電解液を利用するために発火する危険性がある。さらに使用温度範囲の制約も大きい。日産は全固体電池にすることで液系の弱点を解消し、電池の衝突対策機構や冷却機構を簡素化し、低コスト化につなげられるとみる。
日産は、全固体電池の採用を想定した将来のEVプラットフォーム(PF)のイメージを披露し、同PFを採用した3種類のコンセプトカーを発表した。オープンカー「Max-Out(マックスアウト)」とSUV「Hang-Out(ハングアウト)」、ピックアップトラック「Surf-Out(サーフアウト)」である。「全固体電池を活用することでEVの新たな可能性を引き出す」(内田氏)ことを狙った。
例えば軽量化とともに車高や重心高を低くし、運動性能を高めることを目指す。全固体電池の高いエネルギー密度を生かして、軽くて薄い電池パックとしながらも大容量化できる特徴を利用した。さらに車体とシャシーと電池パックを統合することで小型化することも想定する。全固体電池の安全性の高さを生かす。
日産は、液系リチウムイオン電池の低コスト化も推し進める。コバルトフリー技術を採用することで、28年度までに1kWhあたりのコストを現行リーフ搭載品と比べて65%削減する。
30年度までの電動車比率の目標を示した。同年度までに15車種のEVを含む23車種の電動車を導入し、日産ブランドとInfinitiブランドで投入する車種のうち、電動車(EVとHEV)の比率を50%以上にすることを目指す。リチウムイオン電池の生産能力については、26年度までに世界で52GWh、30年度までに同130GWhへと引き上げる予定だ。
途中段階の26年度までにEVとHEVの合計で20車種を導入し、主要市場における電動車の販売比率を高める。欧州で75%以上、日本で55%以上、中国で40%以上にする目標を掲げた。米国については30年度までにEVだけで40%以上にする。
さらにEVのSUV「アリア」と同じPF「CMF-EV」を採用しつつ、アリアよりも小さいとみられるEVのコンセプト「Chill-Out(チルアウト)」を披露した。