KDDIとパーソルプロセス&テクノロジー(東京・江東)、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は2021年11月24日、全国13地域で合計52機のドローンの運航を同時に管理する実証実験を実施したと発表した。各ドローンを配送や警備などのユースケースを想定して飛行させ、KDDIのネットワークなどに接続して遠隔で操作したという。飛行中に他のドローンやヘリコプターとの接触を防ぐテストも実施した。有人地帯におけるドローンの目視外飛行である「レベル4」の22年12月の解禁に向け、安全飛行のプラットフォームを築く狙いがある。
この実証実験は21年10月27日に実施した。特徴は、ドローンの通信に主にKDDIのLTE回線を使った点である。「人口カバー率99%」(同社)という全国各地に配備された基地局を生かして、KDDIはドローンの運航管理システムの事業化を図ろうとしている。その手始めとして今回、全国13地域、合計52機のドローンを同時に飛行させ、それらを同社の東京・虎ノ門拠点から遠隔で制御した格好だ。実証地域は北海道稚内市や三重県志摩市、長崎県五島市など。20を超える企業や自治体が参加した。
実験内容の詳細は以下の通り。まず、現地オペレーターがドローンの電源を起動する。各ドローンには、医薬品配送や物資輸送、災害初動調査などの役割を割り振っており、現地オペレーターの目視内自律飛行である「レベル2」で飛行する。飛び立った各ドローンは、周辺の基地局に2.4GHz帯の電波を使って、自身の緯度経度や高度、個体ナンバーといった情報を送る。各ドローンの情報は運航管理システムが集約し、管理場所(虎ノ門)のディスプレーに各ドローンの位置情報を表示する。
同じ地域内のドローン同士が接近した場合、注意喚起のためディスプレー上でアラートを表示する。管理場所のオペレーターは現地オペレーターに接近を報告し、ドローンの退避を勧告する。現地オペレーターは、ドローンの飛行高度などを修正して、接触回避を図る。なお、この運航管理システムは、JAXAやウェザーニュースの有人機管制システムに接続しており、ヘリコプターとの接近も感知できる仕組みになっている。
説明会では、三重県で飛行する2機のドローンの遠隔管理を披露した。注意喚起のためのアラートは3段階で表示される。現在の設定では例えば、ドローン同士の距離が200m以内になった場合は黄色、100m以内になった場合はオレンジ色、50m以内になった場合は赤色と、アラートの背景色を変えながら警報を出す。ヘリコプターが接近した場合は、9km以内で黄色、5kmでオレンジ色、2kmで赤色になる。
今後の実用化に向けた課題として、KDDIの担当者はシステムの省人化について指摘した。例えば、現状の運航管理システムは自動化している部分が少なく、多くの場面で制御にオペレーターの判断が必要になる。実用化の際には、現地で必要なオペレーターの人数を減らしていく必要があり、将来的には、システムで得られた情報から自動でドローンを制御し、人の手を介さずに制御できるようにする計画だ。今後KDDIは、22年1月までにドローン運航管理システムの事業化に向けた指針を構築するという。