東芝デジタルソリューションズ(川崎市)は、3D-CADで作成した3Dモデルを実物に重ね合わせて表示する複合現実(MR)ソリューション「Meister MR Link」の提供を開始した。専用の設備・機器が不要で、既存の3D-CADデータを利用して汎用のタブレット端末に表示できる(図1)*1。製造現場で設計と実物の差異や品質を確認する、といった使い方を想定する。
3D-CADデータから3Dモデルへの変換は、Meister MR Linkのツールを使ってユーザー環境内で実行できる。タブレット端末用のアプリを「App Store」(米Apple)からダウンロード・インストールするだけで、MR表示が可能になる。
主に、試作開発や量産前試作の業務に適した機能を用意した(図2)。「バーチャル付箋機能」は、画面をタップしてバーチャル空間にメモ(付箋)を残す機能。バーチャル付箋は、テキスト情報や3Dモデルとひも付いた3D座標情報を保持するので、作業結果に位置座標を加えて一緒に管理する証跡管理が可能だ。保存した付箋は、次回以降も3Dモデルにひも付けられた場所に表示されるため、情報共有や教育にも生かせる。
作業実績や作業内容を記録する「実績登録機能」により、作業の抜け・漏れや不具合情報、気付き情報を作業後に確認できる。現場でタブレット端末に記録した内容をCSV形式で出力し、パソコンなどで読み込むことも可能。記録内容を共有すればレポートの代わりになり、レビュー時間を縮められる。
例えば、自動車の量産前試作における溶接打点の品質チェックに同ソリューションを活用した場合、付帯作業の手間と時間を減らせる上、作業品質も改善できる。従来、サプライヤーから受け入れた部品の打点検査や、溶接ロボットが打点した溶接の品質をチェックする現場では、実寸大模型(ガバリ)を実物と重ね合わせて品質を確認しており、ガバリの製作・修正や治具の手配に時間がかかっていた。見比べ作業のため、作業の抜け・漏れや手戻りが発生しやすいという課題もあった。
東芝デジタルソリューションズの調べでは、同ソリューションの活用により、ガバリ製作からレポート出力までの作業時間を最大8割短縮できた例があるという。
金型とプレス機の組み付け検証では、実物にプレス機の3Dモデルを表示して干渉具合をチェックできる。従来は、金型の背面にプレス機の図面をかぶせて、プレス機のクッションピンと金型の干渉具合を確認しており、断面しか見えず不正確になりやすかった。同ソリューションを活用すれば、断面だけでなく立体的に検証でき、現場で組み付けた際に想定外の干渉が発生しにくくなる。3Dモデルを表示させるだけなので、誰でも同じ評価が可能だ。
東芝デジタルソリューションズは、コンサルティングからソリューションの導入・運用までを支援する。コンサルティングでは、ユーザーの3D-CADデータ1つをサンプルコンテンツに変換し、デモンストレーションを実施。ソリューション導入に当たっては、容量の調整や3D-CADデータのツリー構造の最適化、マーカーの貼り付け位置の設定、試験運用などの準備、といったサービスを提供する。月額固定料金で利用できるため、少ない初期投資で使い始められるとしている。