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 ファーストリテイリング(以下ファストリ)は2021年12月24日、ITスタートアップのアスタリスクならびに特許ビジネスを手掛けるNIPとの間で係争していたRFID(無線自動識別)を使ったセルフレジの特許を巡る訴訟について、同月23日に全面的に和解が成立したと発表した。アスタリスクも同月24日に同様の発表をした。

 問題となったセルフレジは、くぼみの中に商品や買い物かごを置くだけで商品に付いたRFIDタグを読み取る機能を備える。アスタリスクは同セルフレジの特許を2017年5月に出願。2019年1月に登録された。併せて親特許を含め、関連技術を分割して特許を複数取得した。

 ファストリ側は2019年5月に同特許の無効審判を請求。これに対しアスタリスクは同年9月に、ファストリ側に対する特許権侵害行為の差し止め仮処分を東京地方裁判所に申し立てるなど、両者の間で激しく争ってきた。

 アスタリスクはかねて株式上場を目標にしていた。ファストリとの訴訟が業績に影響を与えるリスクを懸念し、2020年11月に日本におけるセルフレジの特許をNIPに譲渡することを決定。その後、アスタリスクは2021年9月30日に東証マザーズに上場し、NIPをフォローする立場でファストリとの訴訟に参加していた。

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 3社合同の発表文を要約すると、「ファストリは現在NIPが保有する特許が有効に存在することを尊重し、アスタリスクとNIPはアスタリスクの特許出願が公開される以前からファストリが独自にセルフレジを開発して使用していたと確認する」ことで和解合意に至った。一般に特許出願から1年半後に発明内容が公開される。アスタリスクが特許を出願してから1年半後の2018年11月よりも前に、ファストリは既にセルフレジを独自開発して使用していたという意味だ。

 和解理由は「話し合いを継続するなかで、互いのそれぞれの主張はボタンのかけ違いから発生したものであるという相互理解ができ、かつ、係争状態を長期化させることは互いの事業を阻害しかねないという観点から、互いに無益であるという意見で一致」したことである。

 今後はそれぞれの権利や事業を尊重し、互いに良好な関係を築くという。ファストリはユニクロやジーユーの国内外の店舗において、今後もセルフレジを展開する。アスタリスクやNIPはこれまで通り、特許品としての販売やサービス提供を継続する。