米Texas Instruments(TI、テキサス・インスツルメンツ)は、自動車のADAS機器に向けたレーダーセンサーSoC(System on a Chip)を発売した ニュースリリース 。使用可能な周波数範囲はミリ波帯の76G〜81GHz。新製品の特徴は3つある。1つ目は、実装面積を競合他社品に比べて約30%削減できること。2つ目は、空間分解能を競合他社品に比べて33%高められること。3つ目は、物体を検出可能な距離が競合他社品に比べて1.4倍と長いことである。
1つ目の特徴は、多くの機能を1チップに集積することで実現した。ユーザープログラムの実行やインターフェース処理を担当する英ArmのCPUコア「Cortex-R5F」や、レーダー信号のデジタル処理を担うTI独自のDSPコア「C66x」、4個のミリ波トランスミッター回路、4個のミリ波レシーバー回路、ベースバンド信号への変換に向けたA-D変換器、CAN-FDインターフェース、10M/100Mビット/秒のEthernetインターフェースなどを1チップに集積した。Cortex-R5Fコアは2個集積しており、それぞれが同じ処理を行って、結果が同じであればそれを実行するロックステップ(Lock Step)方式を採用した。Cortex-R5Fコアの動作周波数は300MHz。C66xコアの動作周波数は360MHzである。
2つ目の特徴は、4個のミリ波トランスミッター回路を集積することで実現した。「空間分解能が高まれば、物体の検出精度が向上し、衝突を回避できる可能性が高まる」(同社)。トランスミッター回路の最大出力パワーは12dBm。レシーバー回路の雑音指数(NF)は13dB、位相雑音は−95dBc/Hz(76G〜81GHzにおける値)である。
3つ目の特徴は、ドップラー分割多元接続(DDMA:Doppler Division Multiple Access)と呼ぶ信号処理方法を採用することで実現した。DDMAを使えば、物体が長距離にあってもその検出精度が低下しないため、検出可能な距離を延ばせたという。
新製品の型番は「AWR2944」。45nm世代のRFCMOSプロセスで製造した。パッケージは、実装面積が12mm×12mmと小さい266端子フリップチップBGA(FCBGA)。動作温度範囲は−40〜+140℃である。車載用半導体ICの品質規格「AEC-Q100」に準拠する。現在、量産中である。1000個購入時の参考単価は23.95米ドル。評価モジュール「AWR2944EVM」を用意している。参考単価は549米ドルである。