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 「好況だが、部品不足が深刻化している」――。2022年1月11日、ファクトリーオートメーション(FA)業界誌を発行するニュースダイジェスト社(名古屋市)が主催する22年の工作機械業界の展望を語る講演会で、日本工作機械工業会(日工会)会長の稲葉善治氏(ファナック取締役会長)をはじめとする多くの業界トップが部品不足による生産ひっ迫の可能性を指摘した。新型コロナウイルスの感染拡大による物流の停滞などを受けて部材の価格も上がっており、各社の利益を圧迫しそうだ。

日本工作機械工業会(日工会)会長の稲葉善治氏(ファナック会長)
日本工作機械工業会(日工会)会長の稲葉善治氏(ファナック会長)
(出所:日経クロステック)
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 ニュースダイジェスト社の八角秀編集長は部材不足の影響について、「従来、工作機械の生産額は受注額に対して8割強の水準で推移していたが、21年と22年は半分から3分の2程度しか造れない状況だ」と指摘した。過去最高の受注を記録した18年も受注に対する生産額は8割を切る水準だったものの、生産額は約1兆2000億円。対して22年は「1兆円に届くか届かないかという水準で金額として少し厳しい」(同氏)という。

ニュースダイジェスト社の八角秀編集長
ニュースダイジェスト社の八角秀編集長
(出所:日経クロステック)
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 部品不足に加えて、さまざまな部材の価格が上昇傾向にあり、製造原価が上昇している。同氏は「一昔前は受注が月当たり1000億円あれば好況だと言われていたが、その基準が1~2割くらい上がっているのではないか」と業界の経済環境の変化にも触れた。

部品不足は高速道路の渋滞のよう

 業界トップは部品不足が続く中での、好調な需要にどう対応するのか。工作機械の要素部品を供給するTHKの寺町彰博社長は「部品不足は高速道路の渋滞のようだ」と例えた。部品の総量は間に合っているものの、物流の停滞などで製品が完成に至っていないという見方だ。部品が争奪戦になる中、コネクターを1年分発注した企業があるという話を引き合いに、「今は需要が過大で危険だ。渋滞が解消した際の反動減が大きい可能性がある」(同氏)と慎重に真の需要を見極める姿勢を示した。

THKの寺町彰博社長
THKの寺町彰博社長
(出所:日経クロステック)
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 ファナック稲葉会長は「部品不足で、供給拠点が一極集中しているサプライチェーンがもろいことが浮き彫りになった」と指摘。今後高い成長が見込まれるインドやアフリカなどの市場も含めたグローバルなサプライチェーンを強化していく必要性を訴えた。実際、同社は製造とサービスの複数拠点化を進めている。

「短納期信仰の見直し必要」DMG森社長

 工作機械の納期は短くあるべきだという考えを見直した方が良いとする見解を示したのが、DMG森精機取締役社長の森雅彦氏だ。「“良品廉価・短納期”と言ってきたが、良品廉価は当たり前としても短納期はもうやめよう」(同氏)と語った。工作機械業界は景気による受注額の変動が大きい。今の好況に対応するだけでなく、不況に備える必要もある。不況期をしのぐために「納期が(比較的長い)10カ月から12カ月の納期を認めてもらって、健全な受注残を保ちたい」(同氏)。現在の受注残については「約半年分ほど。もう少し増やしたい」という。

DMG森精機の森雅彦社長
DMG森精機の森雅彦社長
(出所:日経クロステック)
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 THKの寺町社長も短期的な需要変動に振り回されてはいけないとの考えを示した。例えば、月次の在庫回転率など短期的な指標を重視しすぎると、不況時には在庫を減らすことになり、逆に受注額が伸びてきた際に在庫が不足し、対応できなくなる。「自分たちの成長計画に基づき、在庫基準や回転率の計画を考えるべきだ」(同氏)と述べた。