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 最高裁判所第1小法廷(山口厚裁判長)は2022年1月20日、他人が閲覧するWebサイトに暗号資産を獲得するためのマイニング用プログラムを設置したことで不正指令電磁的記録保管の罪に問われた刑事事件について、プログラムを設置したWebデザイナーの諸井聖也氏を無罪とする判決を下した。2020年2月の東京高裁判決では、諸井氏に対して罰金10万円の有罪判決が言い渡され、諸井氏側が上告していた。

 最高裁判決が高裁判決を棄却したことにより、諸井氏の無罪が確定した。諸井氏の弁護人を務めた平野敬弁護士は判決後の会見で、「諸井氏の戦いだけでなく、技術開発を萎縮させないための日本の技術者全体の戦いであると位置付け、裁判を戦ってきた」と裁判を振り返った。

無罪判決を受けた諸井聖也氏(左)と弁護人の1人である平野敬弁護士
無罪判決を受けた諸井聖也氏(左)と弁護人の1人である平野敬弁護士
(写真:日経クロステック)
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 裁判では、一般のWebサイト閲覧者に無断でマイニング用プログラムを置くことが、利用者の意図に反する動作をする「反意図性」と、一般には不正アクセスやデ ータ破壊などが該当する「不正性」を要件とする不正指令電磁的記録に関する刑事罰に問えるかが争われた。

 判決はまず反意図性について、問題となったプログラムコードの動作をサイト閲覧者が認識すべきとはいえないとして、反意図性があったと認定した。一方で不正性については否定し、不正指令電磁的記録の罪に問うことは「重大な事実誤認に該当する」と結論付けた。

 判決では不正性を否定した根拠として、大きく2つの点を挙げた。第1に、マイニングによる閲覧者のパソコンのCPUの負荷や消費電力の増加が一定程度にとどまり、「閲覧者がその変化に気付くほどのものではなかった」という点。第2に、プログラムコードの動作内容、動作が与える情報処理の影響、その利用法を考慮すると、「社会的に許容し得ないものとはいえない」点である。加えて「Webサイトの運営者が閲覧を通じて利益を得る仕組みは、Webサイトによる情報の流通にとって重要である」とも指摘しており、プログラム動作の不正性を否定する根拠の1つとなっている。