高強度と透明性を両立させたポリカーボネート(PC)を出光興産が開発した。同社が展開するPC「タフロン」にガラス繊維を含有して強度を高めながらも、曇らせずに透明性を維持した。通常のPCよりも強度を要する、ゲーム機の筐体(きょうたい)やスマートフォンのバックカバーなどの用途を探る。
強化材として20質量%のガラス短繊維をPCに添加した。PCは共重合を、ガラス繊維は成分比率を工夫し、両材料の屈折率をできる限り近づけた。これにより、新しいガラス繊維強化PCは入射した光を散乱させずに通過させ、高い透明性を実現した。透明性の指標として採光性を示す全光線透過率は88~90%、同じく曇り具合を表すヘーズ(曇価)値は4.7。通常のPCがそれぞれ90%と1~2程度なので、全光線透過率は同等、ヘーズ値は若干通常のPCに劣る程度の透明性を保つ。
ガラス繊維を含む分、当然強度は増す。特に曲げ強度は180MPaと、通常のPCの90MPaから2倍に引き上げた。剛性も7.0GPaと、通常のPCの2.4GPaに対して2.9倍に高めた。そのため、新しいガラス繊維強化PCを使うと筐体やカバーがたわみにくくなる。加えて、引っかき硬さ(鉛筆法)も、新しいガラス繊維強化PCは2Hと、通常のPCの2Bから向上させた。
従来のガラス繊維強化PCは、PCとガラス繊維の屈折率が異なるため、入射光が散乱していた。従って、強度や剛性は高いものの不透明だった。
新しいガラス繊維強化PCは、外観デザインの自由度も高まる。透明なため、他の加飾を邪魔しないからだ。不透明だと色を付けた場合でも外観品質を損ねることがあるという。
PCの高強度・高透明グレードとして2023年度の販売を目標に掲げる。