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 徳島大学と三洋化成工業は2022年1月24日、高吸水性樹脂(Superabsorbent Polymer:SAP)を用いて、細胞から分泌される微小物質であるエクソソームを短時間で高精度、高収率に回収する精製法を開発したと発表した。従来主流の超遠心分離法が精製に2~3日かかるのに対し、新手法では2時間で処理できる(図1)。不純物の含有率は超遠心分離法の100分の1程度、収率は5倍程度になるという。エクソソームを利用した病気の診断薬や治療薬などの開発の加速が期待できる。

図1 新手法の概要
図1 新手法の概要
(出所:三洋化成工業)
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 エクソソームは細胞から分泌される直径50~150nm程度の膜小胞で、血液や尿などの体液に含まれる。新手法の特徴は、紙おむつなどの原料としても使用されるSAPのような一般的な樹脂材料を用いる点にある(図2)。精製の大まかな手順は以下だ。まず、エクソソームを含む検体をSAPと接触させる。その際、水分や不純物はSAP内部へ取り込まれ、エクソソームはSAP界面に吸着される(図3)。これを洗浄した後、SAPからエクソソームのみを分離させる液体を添加し、エクソソームを取り出す。

図2 水を吸収したSAPの様子
図2 水を吸収したSAPの様子
紙おむつなどの原料になる一般的なSAP。この写真は今回開発したSAPとは異なる。(出所:三洋化成工業)
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図3 SAP界面にエクソソームが吸着された様子
図3 SAP界面にエクソソームが吸着された様子
黄色で示されているのがエクソソーム。蛍光色素で標識されている。(出所:三洋化成工業)
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 新手法で使用するSAPは専用に開発したものだが、免疫沈降法のような高精度、高収率をうたう従来の手法と比べても、「コスト優位性がある」(三洋化成工業)。

* 免疫沈降法 ターゲットとなる生体分子(抗原)と特異的に結合する物質(抗体)を利用して混合物中から目的とする分子を精製、回収する方法。例えば、あらかじめ抗体と磁気ビーズを結合させ、次いで、抗原を含む検体を添加し、抗原と抗体を結合させる(抗原-抗体-磁気ビーズの複合体となる)。その後、磁石を使って磁性ビーズを集め、最後に抗原のみを溶出させて、回収する。

 近年、エクソソーム研究に関する研究が活発だ。エクソソームは、細胞から細胞に運搬されることで体内の様々な現象を引き起こす。例えば、細胞間で情報を伝達したり、がんの転移に影響を与えたりすることが明らかになってきた。エクソソームを使った、もしくは標的とした病気の予防・診断・治療法の開発に期待が高まる。

 今後は新手法の普及を目指し、医薬品や化粧品業界のパートナー企業を募る。また、1mlの検体を精製できる研究用試薬の販売を、2023年に開始する計画だ。

図4 記者説明会の様子
図4 記者説明会の様子
三洋化成工業事業企画本部第2研究企画開発部部長の斉藤太香雄氏(写真上、左)とユニットチーフの太田浩二氏(写真上、右)、徳島大学大学院医歯薬学研究部保健学域の冨永辰也准教授(写真左下)、同院社会産業理工学研究部理工学域の右手浩一教授(写真右下)。(出所:日経クロステック)
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