日本自動車工業会(自工会)は2022年1月27日に定例記者会見を開き、同会長の豊田章男氏(トヨタ自動車社長)がカーボンニュートラル(炭素中立)への取り組みについて説明した。
自工会では、これまで炭素中立そのものを正しく理解することの重要性を繰り返し訴えてきた。「敵は内燃機関ではなく、炭素であること、山の登り方(炭素中立に向けた道筋)は1つではないこと、最初から顧客の選択肢を狭めないでほしいということ」(同氏)などだ。
こうした活動によって一定の理解は得られたものの、「多様な選択肢の必要性に関する国際的な理解はまだまだ限定的」(同氏)と指摘する。このため、22年も「選択肢を狭め、山の登り方に制限をかける動きが世界的に進まないように、政府とも連携したい」(同氏)と述べた。
ソニーグループが電気自動車(EV)市場への参入を検討している点については、自工会副会長の三部敏宏氏(ホンダ社長)が「新たなプレーヤーが加わると、互いに切磋琢磨でき、モビリティー社会の成長や活性化につながるため、歓迎したい」とコメント。豊田氏も「ソニーさんが自工会に入ることをお待ちしている」と述べた。
このほか、22年に取り組む5つの重点テーマも発表した。(1)成長・雇用・分配への取り組み、(2)税制改正、(3)炭素中立、(4)CASEによるモビリティーの進化、(5)自動車業界のファンづくり、である。この中で特に重要な(1)について詳細を説明した。
日本の自動車業界は新型コロナウイルス禍の19年末から21年9月までの間に、雇用を約22万人増やした。これは平均年収を500万円とすると、家計に約1兆1000億円を回した計算になる。自動車・部品産業における14~19年の平均賃上げ率は約2.5%と「全産業トップの水準」(豊田氏)であり、09~20年の累計納税額は約10兆円になるという。
今後の成長に関しては「保有の回転が鍵」(同氏)と指摘した。現在、日本の四輪車保有台数は約8000万台であり、その平均保有年数は15年以上と長期化している。これを10年に短縮すれば、市場規模(年間の新車販売台数)は現在の約500万台から約800万台に増え、自動車の出荷額は年間約7.2兆円増えるという。税収も消費税1%分に相当する年間約2.5兆円の増加につながるとした。
CASEの時代、クルマは単なる移動手段ではなく、「蓄電池や情報通信デバイスといった社会インフラの一部になる」(同氏)。自動車が社会の基幹産業として成長し続けるために「保有の回転を促す政策を、政府とも一緒に議論していきたい」(同氏)と述べた。