情報通信研究機構(NICT)は2022年1月31日、同機構が保有するホログラムプリント技術(HOPTEC)を応用して、裸眼立体視が可能な新たなプロジェクション方式の透明ディスプレー装置を開発したと発表した。新たなホログラフィックフィルムの開発により、以前に開発していたディスプレー装置よりも小型化と低コスト化が可能で、広視野角を実現。「早ければ1~2年で製品化が見込める」(NICTの担当者)という。

NICTが開発した透明ディスプレーに、顔の3D映像を表示している様子
NICTが開発した透明ディスプレーに、顔の3D映像を表示している様子
写真左が透明ディスプレーで、写真右がモデル本人。(写真:NICT)
[画像のクリックで拡大表示]

 今回の装置のポイントは、「HOPTECが進化したことで、複数の小型プロジェクターに対応したホログラフィックフィルムを作れるようになった」(同担当者)ことである。

 NICTは2016年にも裸眼立体視が可能なプロジェクション方式の透明ディスプレー(スクリーン)装置を発表している。新しく開発したホログラフィックフィルムを採用したことで、「当時に比べて小型で広視野角な装置にできた」(同担当者)。さらに、ホログラフィックフィルムの透明度も高く、AR(Augmented Reality)用途での活用も見込む。

 特に、ホログラフィックフィルムを変えたことで、利用するプロジェクターが変わったのが大きいという。今回の装置は、映像の投映に約30台の小型プロジェクターを用いる。2016年の装置は専用のホログラフィックプロジェクターをNICTが開発しており、天づりするような大掛かりな装置になっていた。

 今回の装置では市販の一般的な小型プロジェクターを使用できるようになったため、装置が小型化でき、プロジェクター自体のコストも低く抑えられるようになる。「2016年の装置では、投映する映像自体も特殊な形式にする必要があり、製品化が遠かった。一方で今回は、一般のプロジェクターから映像を投映するだけなので、製品化が視野に入るようになった」(同担当者)。

NICTが開発した裸眼立体視可能な透明ディスプレーシステム
NICTが開発した裸眼立体視可能な透明ディスプレーシステム
(写真:NICT)
[画像のクリックで拡大表示]
透明ディスプレーに映像を表示した例
透明ディスプレーに映像を表示した例
(写真:NICT)
[画像のクリックで拡大表示]

 今回の装置では、約30台のプロジェクターを使って約30視点の立体視を実現し、水平視野角を約60度、垂直視野角を約10度とした。以前の装置では、透明ディスプレーの正面の限られた狭い範囲でしか立体視ができなかったが、今回は視野角を大きく改善できたという。

 今後、エンターテインメントや医療分野、遠隔コミュニケーション用途のほか、車載機器への採用など、幅広い分野での実用化に向けて製品化を進める。現在の装置は表示領域が対角35cmだが、用途に合わせて「ディスプレーの大型化を進めていきたい」とNICTの担当者は話す。

 加えて、表示する3Dコンテンツの充実についても重要視する。今回は、凸版印刷と協力し、顔の3次元情報などを計測(3Dスキャン)した高精細な3D映像を表示して裸眼立体視を検証した。今後NICTは、より多くの3Dデータ形式への対応や、3Dコンテンツの高精細化に向けた開発を進めていくという。

顔を3Dスキャンして透明ディスプレーに表示した様子
顔を3Dスキャンして透明ディスプレーに表示した様子
凸版印刷が導入している計測機器「ライトステージ」で顔の3次元データを計測し、3D映像を生成して表示している。(写真:NICT)
[画像のクリックで拡大表示]
NICTのホログラムプリント技術(HOPTEC)の概要
NICTのホログラムプリント技術(HOPTEC)の概要
(図:NICT)
[画像のクリックで拡大表示]