PR

 三菱鉛筆はリチウムイオン2次電池の導電助剤向けに、高濃度かつ低粘度で導電性の高いカーボンナノチューブ(CNT)分散液を開発した。凝集力の強いCNTをペンのインク開発で培った顔料分散技術でほぐし、分散させた。電池の高容量化につながる製品として、車載向け電池や蓄電池での採用を目指す。

三菱鉛筆が造った分散液
三菱鉛筆が造った分散液
(出所:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 「nano tech 2022」(2022年1月26~28日、東京ビッグサイト)でCNT分散技術について展示した。CNTを分散させた結果、高濃度、低粘度で導電性の高いCNT分散液を実現できた。同社担当者によると「通常はCNTの濃度が4%を超えると、どろどろとして扱いにくい液体になるが、開発品は4.6%でも流動性を保てている」。導電性については「他社製品の半分のCNT濃度で、同等の導電性が得られる」(同社担当者)という。

 CNTは太さがnm単位、長さがμm単位のチューブ状の炭素材料。CNT分散液は溶剤にCNTを分散させた液体で、バインダーや活物質と混ぜ合わせた後、電極になる金属箔に塗布して使う。

 一般的な導電助剤であるアセチレンブラックなどと比較してCNTは少量で導電性を高められる。導電助剤を減らせる分、電気容量を左右する活物質を増やせるため、電池を高容量化できるとして注目が集まっている。

 ただし、CNT分散液はCNT同士が絡み合って束や塊になりやすく、CNTが持つ特性を十分に発揮できないという課題があった。加えて、輸送費などの観点から分散液中のCNTの濃度は高い方が望ましいものの、高濃度になるほどCNTが凝集して分散液の流動性が落ち、扱いにくくなる点も問題だった。

 三菱鉛筆には筆記用具の開発で炭素材料を分散させるノウハウがあった。例えば、同社の水性ボールペン「ユニボールアイ」の黒色は、炭素の微粒子であるカーボンブラックを顔料として分散させている。こうしたインク向けの技術や装置を生かしてCNTの凝集を防いだ。

三菱鉛筆の販売するペン
三菱鉛筆の販売するペン
写真はユニボールアイとは別のペン。(出所:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]