マツダは次世代の「SKYACTIV」エンジンを制御するECU(電子制御ユニット)のキャリブレーション(パラメーターの最適化)工程に、英Secondmind(セカンドマインド)の機械学習技術を導入する。同工程の開発効率を従来比2倍に高め、電動化の工数を確保する。
マツダはシミュレーション技術を使って開発を効率化するモデルベース開発(MBD)に、セカンドマインドの機械学習技術を組み合わせることで、開発のさらなる効率化を狙う。次世代エンジンの量産時期は未定だが、今回マツダはセカンドマインドと複数年のライセンス契約を結び、機械学習による最適化技術導入の取り組みを本格化した。
一般にエンジンのような複雑なシステムでは、さまざまな制御パラメーターを最適化するキャリブレーション工程に多大な時間がかかる。自動車業界では一部のパラメーターを機械学習で最適化する試みが始まっているものの、マツダのように「エンジンを丸ごと機械学習でキャリブレーションする試みは業界初」(セカンドマインド日本法人代表の井上友宏氏)という。また、セカンドマインドの機械学習技術が自動車のキャリブレーション工程に活用されるのも、今回が初めてとなる。
エンジンのキャリブレーション工程では、制御パラメーターを少しずつ変えながら、さまざまなエンジン特性を測定し、最適点を探していく。これに対し、セカンドマインドの機械学習技術「アクティブラーニング」では、まず初期の測定データを基に、信頼度の低い(粗い)予測モデルを作る。
次に、予測の信頼度を高めるために、どのような条件で測定すべきか、レコメンド(推奨)する。技術者がそれを了承し、新たな測定データが得られると、機械学習はモデルを改良して予測の信頼度を高める。このサイクルを繰り返すことで、効率的にキャリブレーションする。「機械学習を使うことで測定点の数を従来比80%減、キャリブレーションの工期を同50%減にできる」(同氏)という。
セカンドマインドの機械学習技術は、クラウドベースのSaaS(Software as a Service)製品として提供され、さまざまなMBDツールと連携できる。このため、既存のMBDフローを大きく変えることなく、効率化が可能となる。また、同社の機械学習技術は汎用性が高く、エンジン制御以外にも、ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)のパワートレーン制御などに応用できるという。