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 TDKは、ADAS(先進運転支援システム)機器に向けた積層型コモン・モード・チョーク・コイル(CMCC)を発売した ニュースリリース 。特徴は、最大使用温度が+125℃と高いと同時に、データ伝送速度が最大10Gビット/秒(bps)の差動インターフェースのノイズ対策に使えることである。同社によると、「これら2つの特徴を持つ積層型コモン・モード・チョーク・コイルの製品化は業界初」という。

ADAS機器に向けた積層型コモン・モード・チョーク・コイル
ADAS機器に向けた積層型コモン・モード・チョーク・コイル
(出所:TDK)
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 応用先は、フロント・センシング・カメラや、アラウンド・ビュー・モニター、ヘッド・アップ・ディスプレー(HUD)、サイド・ミラー・カメラなどのADAS機器である。「例えばフロント・センシング・カメラは、障害物をより高い精度で検出するために高解像度化が進んでおり、差動インターフェースで伝送する映像信号の伝送速度は急速に高まっている。それに合わせてノイズ対策部品であるコモン・モード・チョーク・コイルにも、高速対応が強く求められていた」(同社)。適用可能な差動インターフェース規格は、「USB 3.1 Gen2」、「HDMI 2.0」、「LVDS」、「MIPI D-PHY(High Speed)」などである。

 新製品の名称は「KCZ1210DHシリーズ」。外形寸法は1.25mm×1.0mm×0.5mmと小さい。いわゆる「1210サイズ品」である。10Gビット/秒と高い伝送速度に適用可能になったのは、内部構成を変更したためだ。今回は、誘電率が低いセラミック材料を一般的なフェライト材料で挟み込む構成を採用した。これで内部電極間の浮遊容量を抑えられ、高速な映像信号のノイズ対策に使えるようになった。5Gビット/秒程度のノイズ対策に向けた同社既存品「KCZ1210AHシリーズ」は、透磁率が低いフェライト材料を一般的なフェライト材料で挟む構成を採っていた。

 +125℃での使用が可能になったのは、同社既存品であるKCZ1210AHシリーズと同様に電極構造を採用したからである*。従来同社は、積層型コモン・モード・チョーク・コイルの素体の上にAg層、Niめっき層、Snめっき層の順番で形成する電極構造を採用していた。KCZ1210AHシリーズではこの電極構造を見直し、Ag層とNiめっき層の間に、熱応力に対するクッションの役割を果たす導電性樹脂層を挟む構造に変更した。新製品も、この電極構造を採用することで最大+125℃での使用を可能にした。

* 関連記事 ADASもOK、TDKが業界初の積層型コモン・モード・フィルター
新製品の電極構造
新製品の電極構造
Ag電極層とNiめっき層の間に、導電性樹脂層を挟む電極構造を採用することで、最大+125℃と高い温度で使えるようにした。(出所:TDK)
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 新製品は、コモン・モード・インピーダンスと直流抵抗の違いで2製品を用意した。1つは、「KCZ1210DH120HRTD25」である。コモン・モード・インピーダンスは12Ω±5%(100MHzにおける値)。直流抵抗は1.5Ω(最大値)。もう1つは「KCZ1210DH500HRTD25」。コモン・モード・インピーダンスは45Ω±25%(100MHzにおける値)。直流抵抗は2.5Ω(最大値)である、2製品のインピーダンス周波数特性と挿入損失特性は、下図の通りである。

新製品のインピーダンス周波数特性と挿入損失特性
新製品のインピーダンス周波数特性と挿入損失特性
左図はインピーダンス周波数特性、右図は挿入損失特性である。(出所:TDK)
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 2製品どちらも定格電圧は+5V。定格電流は100mA。絶縁抵抗は10MΩ(最小値)を確保した。使用温度範囲は−40〜+125℃。すでに販売を始めている。サンプル価格は33円(税込み)。量産規模は当初、1000万個/月を予定している。1年後には1500万個/月に引き上げる計画である。

 今後同社は、ADAS機器向けコモン・モード・チョーク・コイルの製品ラインナップを拡充する予定である。「最大12Gビット/秒の差動インターフェースに使える製品や、最大+150℃で使用できる製品などの市場投入を検討している」(同社)。