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 移動通信関連の業界団体GSMA(GSM Association)は2022年4月26日(現地時間)、アジア太平洋地域(APAC)12市場の分析結果を基に高速5Gサービス展開に向けた提言をまとめたリポート「Roadmaps for awarding 5G spectrum in the APAC region」を発表した。同地域の5G対応状況には大きな格差があるとし、700MHz帯と3.5GHz帯の可用性を高めることが成功の鍵だとしている。以下はその概要となる。

関連ニュースリリース: GSMA Sets Out 5G Roadmap for Asia Pacific 関連リポートダウンロードサイト: 5G Spectrum in the APAC region - Roadmaps for Success

 リポートでは、アジア太平洋地域の5G技術をけん引しているのは、2010年から5Gの試験を進めてきた日本、2019年4月3日に世界に先駆けて5Gネットワークを商用化した韓国、2019年6月に5G FWA(Fixed Wireless Access、固定無線アクセス)の運用を開始したフィリピンの3カ国とする。その上で、今回は、パキスタン、カンボジア、インドネシア、バングラデシュ、インド、マレーシア、スリランカ、ベトナム、オーストラリア、香港、シンガポール、タイの周波数確保状況や5G対応ロードマップについて分析・報告している。

アジア太平洋地域12市場のLTEと5Gの対応状況
アジア太平洋地域12市場のLTEと5Gの対応状況
(出所:GSMA)
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 オーストラリア:3.5GHz帯などの5G周波数帯オークションを適切な時期に行い、5G展開を推進。その結果、2021年第2四半期時点で5G人口カバー率76.6%、5G速度も世界最高レベルに達している。

オーストラリアの主要通信事業者が保有する周波数(2021年4月時点)
オーストラリアの主要通信事業者が保有する周波数(2021年4月時点)
(出所:GSMA)
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 シンガポール:情報通信政策を策定するIMDA(Infocomm Media Development Authority、情報通信メディア開発庁)は、3.5GHz帯の3400~3700MHzをFSS(Fixed Satellite Service、固定衛星通信サービス)から移動通信に変更。3450~3650MHzの帯域幅100MHz2本を5G用とし、この3.5GHz帯、26GHz帯、28GHz帯のオークションを2020年、2.1GHz帯のオークションを2021年に開催している。

シンガポールの主要通信事業者が保有する周波数(2021年12月時点)
シンガポールの主要通信事業者が保有する周波数(2021年12月時点)
(出所:GSMA)
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 タイ:NBTC(National Broadcasting and Telecommunications Commission、国家放送通信委員会)は、2019年6月と2020年2月に、5G用周波数帯として700MHz帯、2.6GHz帯、26GHz帯、28GHz帯のオークションを開催。それまでの3GやLTE周波数帯割り当てでは後れをとっていたが、今回は、シンガポールや台湾などと同等の5G展開を可能にしている。

タイの5G用周波数帯とそのライセンス保有状況
タイの5G用周波数帯とそのライセンス保有状況
(出所:GSMA)
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 インドネシア:1.8GHz帯と2.1GHz帯が多く利用されており、一部のLTEサービスでは2.3GHzも使われている。現在、契約者の大半がLTEに移行しており、今後数年間で2G接続は急速に減少すると予測されている。5Gは現在3社がサービスを開始しているが、その対象範囲は一部の都市に限られており、周波数も2.3GHz帯と1.8GHz帯の一部のみを使ったものとなっている。

 インド:周波数帯利用料金が高額なことから、5Gに向けた新しい周波数帯の割り当てが大幅に遅れており、ライセンスの問題から既存の帯域を使った5G展開も進んでいない。LTEの普及は進んでいるが、端末価格や接続料金が高いとして2Gを利用し続ける契約者も多い。

インドの周波数帯割り当て状況
インドの周波数帯割り当て状況
(出所:GSMA)
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 パキスタン:2020年時点では、移動通信のほぼ半数が2G技術を使用しており、今でもLTEを利用できない場所は多い。現在は、細分化された1.8GHz帯の統合による連続的な帯域利用と周波数の利用効率化に向けた計画が進んでいる。

 カンボジア:現在、国内5事業者に試験用周波数が割り当てられており、5G試験が進められている。

 マレーシア:5Gインフラ整備に向けた政府特別目的事業体として、Digital National Berhad(DNB)が設立され、700MHz帯、3.5GHz帯、26GHz帯、28GHz帯が割り当てられた。通信事業者が5Gサービスを提供する際には、このDNBから周波数の供給を受ける必要があり、既存の周波数帯使用は禁止されている。多くの通信事業者がこの政策に反対している。

 スリランカ:商用5Gサービスはまだ開始していないが、2019年より複数の事業者が3.5GMHzを使った商用前実験を実施。1.8Gビット/秒の高速データ通信も実現している。

 ベトナム:MIC(Ministry of Information and Communications、ベトナム情報通信省)は、2020年11月より1年間の予定で、通信事業者に2.6GHz帯、3.5GHz帯、26GHz帯の5G試験用周波数帯を提供。その後、2021年末までに5G用周波数帯オークションを実施するとしていたが、まだ開催されていない。

 香港:2019年に28GHz帯を3事業者に提供、2021年9月には600MHz帯(屋内向け)、700MHz帯、850MHz帯、2.6GHz帯、4.8GHz帯のオークションも開催するなど、主要周波数帯の割り当てが進んでいる。5G周波数帯に関する明確なロードマップがあるため、通信事業者が投資に意欲的であり、それが5G可用性保証につながっている。

 リポ―トでは、700MHz帯と3.5GHz帯が5Gのカバレッジと容量を確保するために適した周波数帯であり、特に3.5GHz帯(3300M~4200MHz)は商用5G展開に向けた主要周波数帯として、世界中で利用されているとする。この周波数が既に衛星通信などで使用されている場合にも、衛星通信と5G需要のバランスをとりながら再配備を行い、5Gで使用可能な帯域幅を確保していく必要があるとしている。

12市場の周波数確保と4G/5G対応の状況
12市場の周波数確保と4G/5G対応の状況
(出所:GSMA)
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