韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は2022年5月8日(現地時間)、6Gに必要な周波数帯に関する同社の見解をまとめた白書(ホワイトペーパー)「6G Spectrum: Expanding the Frontier」を公開した。2020年7月に同社が発表した6Gビジョンを実現するには、超広帯域の周波数確保が必要になるとした上で、周波数帯に関する規制見直しや周波数活用技術の研究開発も不可欠だとしている。
関連ニュースリリース1: Samsung Unveils 6G Spectrum White Paper and 6G Research Findings白書では、6Gの超高速大容量通信を実現するには、帯域幅として数100MHzから数10GHzの連続した超広帯域が必要になるとする。カバレッジを確保するためにも、1GHz未満の低周波数帯から1G~24GHzの中周波数帯、24G~300GHzの高周波数帯まで、6Gに使用可能なすべての帯域利用を検討すべきだとしている。
6Gのサービス開始時には5Gネットワークもまだ稼働中であることから、6G用の新たな周波数確保が重要だとした上で、高速データ通信とカバレッジ確保が可能な中周波数帯(7G~24GHz)、超高速データ通信用のサブテラヘルツ帯(92G~300GHz)を挙げている。その上で、限られた周波数で6Gを効率的かつ柔軟にサポートするために、将来を見据えた周波数帯の規制見直しや活用技術の研究も不可欠としている。
同白書はSamsung研究所のダウンロードサイトから入手可能となっている。
関連白書ダウンロード: 6G Spectrum: Expanding the Frontier今回の白書公開に合わせて、同社は6Gに必要な技術として研究を進めるサブテラヘルツ帯、RIS(Reconfigurable Intelligent Surface)、XDD(Cross Division Duplex)、Full Duplex(全二重通信)、AI-NC(AIを使ったNonlinearity Compensation)、AI-ES(AIを使った省エネルギー)の進捗についても報告している。
サブテラヘルツ帯:6Gが目指す最大1Tビット/秒のデータ通信を可能にする周波数帯として期待されている。5Gで実現する20Gビット/秒の50倍の高速性を実現する。Samsungでは、2021年6月に屋内15メートルの距離で6Gビット/秒のデータ通信を実現させており、その後も、屋内30メートルで12Gビット/秒、屋外120メートルで2.3Gビット/秒の伝送試験を実施している。
RIS:電磁波の波長よりも細かい構造体を利用して物質の電磁気学的な特性を人工的に作り出すメタマテリアルを使用することで、無線信号を任意の方向に誘導・反射する。ミリ波の伝搬損失低減などに活用する。Samsungでは、独自のRISレンズ技術を使って電波強度を4倍、ビームステアリング可能な範囲を1.5倍に改善する試験を実施している。
XDD:部分的な全二重通信を導入することで、一部の帯域幅での連続上りリンクを実現し、TDDでの伝搬距離を2倍にまで改善、カバレッジを拡張できる。Samsungは独自の自己干渉除去(Self-interference Cancellation)技術を使った基地局試験を実施している。
Full Duplex:同一周波数で同時にデータ送受信できることから、データ通信速度が2倍にまで改善する。Samsungでは、ミリ波を使った全二重通信試験にて、100メートルの距離での114dB超の自己干渉除去とデータ通信速度の1.9倍改善を確認している。
AI-NC:受信機側にAIを搭載し、送信機のパワーアンプの非線形性に起因する信号ゆがみを補正することで、カバレッジや高速データ通信の品質を向上する。Samsung では、上りデータ通信時カバレッジを1.9倍、通信速度を1.5倍改善する試験を実施している。
AI-ES:基地局にAIを搭載し、通信量に応じて電力制御パラメーターを調整することで、ネットワーク性能に影響を与えることなく基地局の消費電力を最小限に抑えることができる。SamsungではこのAI-ESのシミュレーションを行い、10%超の省エネ効果を確認している。
同社は、2022年5月13日に開催予定の「Samsung 6G Forum」にて、これら調査結果詳細を公開するとしている。
関連ニュースリリース2: Samsung Electronics Hosts Its First-Ever 6G Forum To Explore the Next-Gen Communications Technologies