川崎重工業代表取締役社長執行役員の橋本康彦氏は2022年5月10日の決算説明会で、「将来の水素の供給コストの見通しに変わりはない」との見方を示した。
水素事業の拡大を目指す川崎重工は、21年12月に開いた「グループビジョン2030進捗報告会」で、将来の水素の船上引き渡し価格*について、30年に1Nm3(ノルマル立方メートル)当たり約30円、50年には同20円との見通しを示していた。昨今のウクライナ情勢や資源高、円安が将来の水素価格に与える影響は小さいとする。
* 船上引き渡し価格
水素を輸入した場合に、船が日本の港に到着するまでの費用を意味する。貨物の通関、荷下ろし費用等は含まない。
50年に2兆円規模の水素事業を目指す川崎重工は、液化水素運搬船の開発を進めてきた。22年4月には、同社が建造した「すいそ ふろんてぃあ」が日豪間の往復を終え、褐炭から製造した水素の海上輸送試験に成功している。「当初計画した技術的なプロセスを検証できた」(橋本氏)。
同船による液化水素の運搬能力は1250m3で、現在の水素の船上引き渡し価格は1Nm3当たり約170円とされる。今後、同社はさらに16万m3の液化水素を運べる大型運搬船の建造や、水素の荷役設備の開発などを進め、目標とする水素コストを目指していく。
22年3月期の連結決算については、売上高が前年比0.8%増の1兆5008億円、営業損益は458億円だった。新型コロナウイルス感染症の影響が縮小し、53億円の営業赤字だった前年から回復基調にある。
同社の主力事業で、二輪車を中心とするモーターサイクル&エンジン事業の売上高は、前年比1112億円増の4479億円、営業損益は同255億円増の373億円と好調だった。「先進国の旺盛なアウトドア需要を背景に増収増益となった」(同社)。
23年3月期の連結業績予想について、売上高は1兆6800億円、事業利益は530億円を見込む。モーターサイクル&エンジン事業は過去最高益を更新する見通し。