ダイセルは2022年5月11日、2022年3月期の決算説明会で、次世代の新規事業として酢酸セルロースを改良した新材料などの売り上げ目標を公表した。22年3月期の実績1億円に対し、23年3月期は2億円、26年3月期は100億円超、31年3月期は400億円超と大きな伸びを目指す。酢酸セルロースは植物に由来して製造できるプラスチックで、生分解性の向上などにより1回利用の食器(カトラリー)などへの利用を見込める(図)。
同社は酢酸セルロースの分子構造を調整するなどの手段で、生分解性を向上させて海水中での分解も可能にしている。食品対応グレードの開発も進めており、既にカトラリーなどを試作。「グローバルに寄せられる顧客からの強い生分解性プラスチックへの要求に応える」(同社)方針だ。
セルロースを化学修飾して得られるファインセルロースの開発も進める。貴金属やヒ素などを選択的に吸着する機能などを実現する。レアメタルの回収や、土壌中の毒物の吸着といった用途を見込む。
併せて、木材を温和な条件で溶かし、リグニンやヘミセルロースなどを抽出して利用する技術の開発を京都大学、金沢大学との共同研究で進める。木質と金属、ガラス、合成高分子などとの複合材料の開発にも取り組む。これらの「取り組みを俯瞰(ふかん)的に管轄する実行組織」(同社)として「バイオマスイノベーションセンター」を新設し、大学や官公庁との共同開発を推進する方針だ。
ダイセルの22年3月期決算は、売上高4679億円で前年比18.9%増、営業利益は507億円で同59.8%増。期中の酢酸の市況が高めだったことから関連製品の収益に寄与した。エンジニアリングプラスチックは、半導体不足による自動車などの生産量減少の影響を受ける一方で、自動車部品業界の在庫確保の動きに支えられたのに加え、巣ごもり需要により電子機器業界向けの出荷が好調だったことから、売り上げを伸ばした。23年3月期の売上高は5400億円(過去最高)、営業利益は465億円と予測している。