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 「単なる工作機械を売っている世界から大きくビジネスモデルの転換を図ることに成功した」。DMG森精機取締役社長の森雅彦氏は、2022年度第1四半期(1~3月)の好決算の理由についてこう語った。

DMG森精機取締役社長の森雅彦氏
DMG森精機取締役社長の森雅彦氏
(説明会の動画をキャプチャー)
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 連結受注は1500億円、営業利益率は8.8%といずれも四半期ベースで過去最高水準。22年12月期の連結業績予想は、営業利益を当初予想の400億円から450億円に、営業利益率は10%になる見込みと上方修正した。22年度の連結受注見通しも当初予想の4800億円から「5000億円プラスα」に修正した。

2022年12月期(1~12月)の見通し
2022年12月期(1~12月)の見通し
年度連結受注は当初予想の4800億円から「5000億円プラスα」に修正。営業利益率は10.0%を見込む。(出所:DMG森精機)
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「廉価短納期のビジネスを追う必要はない」

 森氏が特に強調したのは、「工程集約と自動化、デジタルトランスフォーメーション(DX)」の需要拡大だ。5軸加工機や複合加工機を用いた工程集約や自動化などに注力してきた体制づくりが奏功し、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による人の移動制限などに伴う需要増に対応。かねて取り組んできた、製品を工場に納品・設置後すぐに稼働できる状態にする「フルターンキー」の導入と併せて、大型投資プロジェクトの受注につながったという。

* 同社は、受注した自動化設備を自社工場でいったん立ち上げて調整。顧客の工場に納入後、設置すればすぐに使える「ターンキーソリューション」として提供している。

 森氏は、「シーメンスやファナックなど世界4大NCメーカー、デンソーやABBなどロボットメーカーとも取引があり、当社はロボットやPLCのプログラミングができる人材を1000人以上抱えている」と、IT関連の人材が豊富である点に言及。こうした体制やフルターンキーの実績などが特に海外の企業から評価され、受注が増えているとの見解を示した。

 営業利益率の向上について同氏は、「価格改定と不採算案件の撲滅、適切に材料の調達上昇を価格に転嫁していくといった努力が実を結んでいる」と説明した。自動化やDXなどを強みに廉価・短納期受注から脱却。受注採算が改善した上に、受注残が豊富なことから購買・生産を計画的に進め、部材・物流価格の上昇を吸収して営業利益率の向上につなげたとする。

 森氏は、「受注残をあえて長く取るようにしている」と言う。顧客と合意の上で12カ月以上、長いケースでは2年以上の納期で受注。顧客はその期間で工場を新築し、従業員を集め、素材を確保してプログラミングやERP(企業資源計画)を準備する。「大規模な工場を建設する際には最低1年、できれば2年は必要」という顧客の要望が増えている状況を考慮すると、「5軸加工機や複合加工機を用いた自動化の推進で、増加する長納期の需要に対応していく。当社は廉価短納期のビジネスを追う必要はない」(森氏)。

22年第1四半期(1-3月)の連結受注構成
22年第1四半期(1-3月)の連結受注構成
(出所:DMG森精機)
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 森氏はこの他、22年第1四半期の連結受注高1500億円のうち、受注増をけん引したのは「電気自動車(EV)と宇宙関連。特に米国のロケット産業向けに50億円を超える受注が数件あった」と説明。受注先として従業員数500人超の企業が増加しているのも、「宇宙関連やEV関連企業からの受注が増えたため」と語った。