日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2022年5月13日、電気自動車(EV)の高電圧システムに向けた小型絶縁部品を発表した(ニュースリリース、図)。機械的な駆動機構を持たない「ソリッドステート方式」を採用することで性能や信頼性を高め、システムのサイズを最大で90%削減できる。
新製品は、10Vゲート・サプライを内蔵する絶縁スイッチ・ドライバー「TPSI3050-Q1」と、1400V耐圧50mA絶縁スイッチ「TPSI2140-Q1」の2製品で、EVや送電設備など産業用途に対応した。
高電圧で稼働するモーターなどのシステムと、低電圧で稼働する精密な電子機器などが安全に通信できるようにする。産業用途では機器や人体に悪影響を及ぼす高電圧サージ(過渡的な高電圧ノイズ)からの保護も想定する。
新製品は、電気回路のオン/オフや切り替えを担う「リレー」部品で、電力と信号の伝送を1つのチップに集約した半導体ベースのソリッドステート方式を採用した。部品点数を減らし、システム全体を大幅に小型化できた。機械的に切り替えるメカニカル方式と比べて切り替え速度を高められる。
米Texas Instruments(テキサス・インスツルメンツ、TI)のパワー・スイッチ担当マネージャーであるプリア・タニガイ氏は13日の会見で、「将来的にメカニカル・リレーは、信頼性や寿命に優れる半導体ベースのソリッドステート・リレーに置き換えられていくだろう」と述べた。
TPSI3050-Q1はゲートドライバーなど複数の機能を内蔵することでメカニカル・リレーに比べてシステムのサイズを最大90%削減した。TPSI2140-Q1は抵抗などを内蔵し、部品数を減らすことで従来のソリッドステート・フォトリレーと比べてサイズを最大50%削減した。
次世代EVの車載システムは800Vの高電圧な電池システムへの移行が進んでおり、高電圧下での高い信頼性が求められる。高電圧測定と絶縁モニタリング向けに設計されたTPSI2140-Q1は、絶縁不良を高速・高精度で検出できるという。
TPSI3050-Q1とTPSI2140-Q1はサンプル出荷を開始しており、価格はそれぞれ1.99米ドル、2.75米ドル。評価モジュールなどもそろえる。