三菱重工業取締役社長兼CEOの泉澤清次氏は2022年5月12日の決算説明会で「脱炭素とエネルギー安全保障の観点から原子力が再評価されている」と語った。
国内の原子力業界では2011年の東日本大震災を契機に安全性の見直しが叫ばれ、原子力発電所の再稼働や次世代の原子力技術の開発は、停滞を余儀なくされた。ここに来て、カーボンニュートラルの潮流や資源価格の高騰などを背景に、民間企業を含めた風向きが変化しつつある。
同社は30年代半ばを目標に、電気出力120万kWの次世代軽水炉を実用化する他、同30万kWの小型軽水炉の開発を進める方針を掲げる。
また、40~50年の将来を見据え、従来の軽水炉とは異なる技術開発にも取り組む。例えば、高温ガス炉(HTGR)による水素製造だ。同社は22年4月、試験炉*を保有する日本原子力研究開発機構(JAEA)と共同で、高温ガス炉と水素製造設備を接続する実証実験を始めたと発表している。
* 高温工学試験研究炉(HTTR、茨城県大洗町)
もう1つの例は、マイクロ炉の開発だ。炉心サイズが直径1×長さ2m以下と小さく、トラックで運べる。離島やへき地の非常用電源などが想定用途だ。燃料交換が不要で、冷却材を使用しない全固体原子炉のため、事故のリスクを低減できるとする。
同社は目下、加圧水型原子炉(PWR)の再稼働など、既設プラントの関連事業に取り組みながら、将来に向けてこうした次世代炉の開発を推進するとしている。
22年3月期の連結決算(国際会計基準)は増収増益だった。売上収益は前年比4.3%増の3兆8602億円、事業利益は同196.3%増の1602億円。ガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)事業を含むエナジー部門などが増収に寄与した。