米Analog Devices(ADI)は、逐次比較レジスター(SAR)方式の24ビット分解能A-D変換器ICを2製品発売した ニュースリリース 。最大サンプリング周波数は2Mサンプル/秒(sps)である。特徴は、変換誤差を表す指標である積分非直線性誤差(INL)が±0.9ppm(最大値)と小さいこと。最大サンプリング速度と分解能が同じ同社従来品のINLは±3.5ppm(最大値)だったため、新製品を使えば変換誤差を約1/4に抑えられる。「競合他社はSAR方式のA-D変換器ICにおいて24ビット品をまだ実用化していない。最も性能が近いのは1Mサンプル/秒の20ビット品だが、INLは±3.75ppm(最大値)と大きかった。これと比較しても変換誤差は約1/4と小さい」(同社)。
応用先は、計測機器や産業機器、ヘルスケア機器、半導体製造装置、科学機器、地震計などである。こうした用途に新製品を適用すれば、アナログ信号を測定/検出する際の誤差を低減できる。
新製品には、このほか3つの特徴がある。1つ目は、SN比が105.7dB(標準値)と高いこと。同社によると、「業界最大のSN比」(同社)という。このため、電圧振幅が小さいアナログ信号を測定/検出が可能になる。2つ目は、集積度が高いこと。A-D変換回路やデジタルフィルター、デジタル出力インターフェース回路だけでなく、リファレンスバッファー回路やデカップリングコンデンサーなども集積した。3つ目は、消費電力が少ないこと。1チャネルのA-D変換回路の消費電力は15mW(2Mサンプル/秒のときの標準値)である。同社従来品は28mW(2Mサンプル/秒のときの標準値)だったため、約1/2に抑えたことになる。
発売した2製品は、搭載したA-D変換回路のチャネル数が異なる。2チャネル搭載した「AD4630-24」と、1チャネル搭載した「AD4030-24」である。2製品どちらも、微分非直線性誤差(DNL)は±0.5LSB(標準値)。ダイナミックレンジは106dB(標準値)。全高調波ひずみ(THD)は−127dB(標準値)。ノイズスペクトル密度(NSD)は−166dBFS/Hz(標準値)である。
2製品どちらも、同社独自の「Easy Drive」技術を搭載した。この技術は、A-D変換回路内部のサンプリング回路で発生するキックバックノイズを低減するもの。一般にキックバックノイズは入力側に送り返され、アナログ入力信号をひずませる。従って、キックバックノイズが大きいと、外付けの入力駆動アンプ回路の設計が難しくなるという問題があった。しかし、「Easy Drive技術の採用でキックバックノイズを抑えたため、入力駆動アンプ回路設計の難易度を下げられた」(同社)。
デジタル出力インターフェースには、同社独自機能「Flexi-SPI」を採用した。この機能を使うことで、SPIのクロック周波数やデータストローブ方式、信号ライン数などをユーザーが選択できる。
パッケージは2製品どちらも、外形寸法が7mm×7mm×1.72mmの64端子CSP_BGA。動作温度範囲は−40〜+125℃。1000個以上購入時の参考単価は、AD4630-24の場合、30.95米ドル。AD4630-24を搭載した評価キット「EVAL-AD4630-24FMCZ」を参考単価199.00米ドルで用意した。
このほか最大サンプリング周波数や分解能、チャネル数が異なる4製品を発売する予定である。4製品の内訳は、最大サンプリング周波数が2Mサンプル/秒で16ビット分解能の2チャネル品「AD4630-16」と、最大サンプリング周波数が500kサンプル/秒で24ビット分解能の2チャネル品「AD4632-24」、最大サンプリング周波数が500kサンプル/秒で24ビット分解能の1チャネル品「AD4032-24」、最大サンプリング周波数が500kサンプル/秒で16ビット分解能の2チャネル品「AD4632-16」である。4製品いずれも、22年末までに販売を開始する予定である。