カシオ計算機は、薄型のフルメタル腕時計「OCEANUS Manta」シリーズの新製品として、ベゼルに江戸切子を取り入れた「OCW-S5000EK」を2022年6月10日に発売する(図1)。サファイアガラス製の円形のベゼルには、堀口切子(東京・江戸川)の堀口徹氏の監修の下、職人が手作業で40本のカッティングを施した。併せて、カッティングを際立たせることを目的に新開発の蒸着を採用し、コンセプトの「斜光」を表現している。
* カシオ計算機のニュースリリース: https://www.casio.co.jp/release/2022/0517-ocw-s5000ek/OCEANUSブランドでは18年から、「伝統と革新の融合」をテーマに掲げて江戸切子や蒔絵(まきえ)、阿波藍の技術を取り入れた製品を展開している。OCW-S5000EKはその新モデルで、江戸切子とのコラボレーションでは第4弾となる。
新モデルは、9時側のインダイアルを中心に、江戸切子の技法である「千筋」を変則的に施した(図2)。従来の江戸切子モデルでは33本・32本のカッティングを施したが、新モデルでは、それらからカッティングの数を増やしている。加えて、中心をずらしたことでカッティングの長さと角度が1本ずつ変わるため、作業の際は、ベゼルリングの持ち方を変えながら削る角度や加工時間などを微妙に調整する必要がある。難易度の高い加工だが、これによって切子に動きが生まれ、「伸びやかな光の筋」(同社)を表現できたとしている。
ベゼルリングの加工工程は以下の通り(図3)。まず、サファイアガラスをリング形状にカットし、上下面とリングの内側を研磨する。リングの内側の研磨は、鏡のようにカッティング部分で光りが反射し、切子のデザインを立体的に見せる効果を生むという。その後、職人の手でカッティングを施してから、蒸着で着色する。
蒸着についても、カッティングを際立たせるために新たな手法を開発した(図4)。具体的には、シルバーを蒸着させてから、一旦、カットした部分以外のシルバーを剥がす。その後、ブルーブラックのグラデーションをかけ、最後に再びシルバーをかけて発色性を高める。こうしてできた色は「わずかにパープルが垣間見え、ブルーからブラックに変化する」(同社)のが特徴で、見る角度によって切子の輝きが変わる。
同社によると、新蒸着の開発は「ラッキーだった」。というのも、「蒸着は“みずもの”で、狙った色がなかなか出ないなどコントロールが難しい。今回は想定外のパープルが現れた」(同社)からだ。この偶然によってデザインの幅が広がり、シャープなカッティングとの組み合わせによって「斜光」の表現が可能になったという。
大きさは48.8×42.3×9.3mmで、質量は約82g。本体は10気圧防水で、Bluetoothを利用した時刻修正や、約300都市の中から2都市の時刻を同時に表示できる機能などを備える。価格は25万3000円(税込み)。世界で限定1000個を販売する。