「成長領域のモビリティー分野において、クルマの移動空間を新たなエンタテインメントの『感動空間』に変える」──。ソニーグループ(以下、ソニーG)代表執行役会長兼社長CEO(最高経営責任者)の吉田憲一郎氏は、2022年5月18日に開いた22年度(22年4月~23年3月)の経営方針説明会でこのように述べ、次世代モビリティーに貢献する取り組みを加速させる考えを示した。
吉田氏によると、世界では現在10億台以上のクルマが保有されているという。次世代モビリティーでは、これらのクルマがネットワークでつながり、OTA(Over The Air)によるソフトウエア更新で、クルマの機能を最新の状態にできるようになる。
また、電気自動車(EV)などの電動車両に加えて、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転(AD)機能を搭載したクルマの普及も予想される。自動運転車が普及すると、クルマは新たなエンタテインメント空間となる可能性が高まる。
吉田氏は、こうした次世代モビリティーの普及に貢献するため、「セーフティー」「エンタテインメント」「アダプタビリティー」の3つの領域に重点的に取り組むとした。吉田氏の発言を受けて、ソニーG執行役専務兼CTO(最高技術責任者)の北野宏明氏は、「技術面ではセンサーとAI(人工知能)への投資を重視する」と述べた。
このうち、センサーはCMOSイメージセンサーやLiDAR(レーザースキャナー)などであり、セーフティー領域に属する。ソフト更新によるクルマの機能進化が、アダプタビリティー領域に相当する。
モビリティーの進化に貢献するためソニーGは22年3月、ホンダとの戦略的提携を発表した。両社は22年内に共同出資の新会社を設立し、同社を通じてEVの初期モデルを25年に発売する計画である。ただ、このホンダとの協業の進捗について吉田氏は「協議中」と述べるにとどめ、詳細には触れなかった。