帝人子会社の帝人フロンティア(大阪市)は2022年5月18日、ポリエステル繊維を従来の6割の使用エネルギーで、石油由来と同等品質の原料にリサイクルできる新触媒を開発したと発表した。新触媒は再生ポリエステル原料の変色を抑えられる。2~3年内に新技術でリサイクルしたポリエステル製品を販売する目標だ。

新しく開発した触媒を使ってリサイクルした再生ポリエステル原料
新しく開発した触媒を使ってリサイクルした再生ポリエステル原料
変色が少なく、石油由来と同等品質の原料が得られる。(出所:帝人フロンティア)
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 開発したのは、廃プラスチックを化学的に分解してから再生する「ケミカルリサイクル」で使用する解重合触媒。ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルをケミカルリサイクルする手法には幾つかの種類がある。同社は既にDMT法*1と呼ぶポリエステルの合成法を活用し、使用済みのポリエステル繊維を、品質の低下を抑えながらケミカルリサイクルする技術を確立していた。ただし、工程にかかる消費エネルギーが大きい点が課題だった。

*1 DMT法 テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールを使用したエステル交換反応によりポリエステルを重合する方法。
DMT法を活用したケミカルリサイクルの流れ
DMT法を活用したケミカルリサイクルの流れ
(出所:帝人フロンティア)
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 一方で、主に無色透明のPETボトルなどを再びPETにリサイクルする際に用いるBHET法*2はDMT法と比較して工程数が少なく、エネルギー消費量を6割程度に抑えられる。ところが、同手法には再生ポリエステル原料が黄褐色変色するなどの課題があった。

*2 BHET法 使用済みポリエステルを化学的に分解し、中間原料であるビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートに戻して精製した後、ポリエステルに再重合する方法
BHET法によるケミカルリサイクルの流れ
BHET法によるケミカルリサイクルの流れ
(出所:帝人フロンティア)
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 新開発した解重合触媒は、BHET法でリサイクルするポリエステル繊維を再重合する際の変色を抑制できる。再生原料が変色する理由としては、使用済みポリエステル繊維に含まれる染料などの不純物を十分に除去できていない場合と、触媒の作用でポリエステルに色が付く場合がある。今回は、触媒を変えることで後者の触媒の作用による変色を抑えた。

従来の触媒を用いた再生PET原料(左)と、変色を抑えられる新開発の触媒を用いた再生PET原料(右)
従来の触媒を用いた再生PET原料(左)と、変色を抑えられる新開発の触媒を用いた再生PET原料(右)
(出所:帝人フロンティア)
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 帝人フロンティアサステナビリティ戦略推進部長の神山統光氏は「再生ポリエステルの品質を上げるために、染料などをどれだけ取り除くかばかりに注力していた。触媒の変更で変色を抑えられたのは新たな発見だった」と語った。新触媒を活用した再生ポリエステル原料の品質は石油原料と同等になるという。

 同社は22年5月に、松山事業所(愛媛県松山市)内に、月当たり数十kgを処理できるパイロットプラントを設置した。同プラントで量産化に向けた実証実験を進める。同時に、リサイクルする対象となる使用済みのポリエステル製の衣料の回収方法の検討も進め、2~3年内の商業化を目指す。商業用のプラントの処理量は「年間数万tのスケールが必要」(神山氏)とみる。

 BHET法で再生したポリエステル繊維はDMT法で再生した場合と比較して、エネルギー消費が少ないため、価格を抑えられる。「石油由来のポリエステル繊維の価格を100とした場合、BHET法の再生ポリエステルは200、DMTの再生ポリエステルは250程度」(神山氏)という。