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 ベルギーの研究組織imecは2022年5月17日(現地時間)に開催した年次イベント「FUTURE SUMMITS 2022」(ベルギー・アントワープ)で、2030年代後半にも数Å(オングストローム)世代プロセスまで半導体を微細化できる可能性があると発表した(図1)。半導体関連企業と共同開発を進める新しい半導体露光装置や材料技術、半導体デバイス構造を組み合わせることで、微細化の限界を突破できるとの見通しを示した イベントのWebサイト「FUTURE SUMMITS 2022」

図1 年次イベントで講演するimecのLuc Van den hove(ルク・ファンデンホーブ)氏
図1 年次イベントで講演するimecのLuc Van den hove(ルク・ファンデンホーブ)氏
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 imecのCEO(最高経営責任者)であるLuc Van den hove(ルク・ファンデンホーブ)氏は講演で、「複数の技術の組み合わせで今後15~20年のスケーリング(微細化)ロードマップが可能になる」とした(図2)。講演スライドで投影した技術ロードマップでは、2036年ごろに2Å(0.2nm)世代を実現するための新しいトランジスタ構造などを示した。現在、世界で実用化されている先端半導体は3nm世代で、半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)などは25年にも2nm世代の生産を始める計画だ。imecは今後も微細化が継続すると見込む。

図2 半導体の微細化に向けたロードマップ
図2 半導体の微細化に向けたロードマップ
(出所:imec)
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 ファンデンホーブ氏は、微細化に欠かせない要素として「次世代EUV(極端紫外線)露光装置」や「トランジスタ構造の進化」「配線工程の工夫」などを例に挙げた。これらの技術の組み合わせで「(1.5~2年で半導体の集積度が2倍になる)ムーアの法則は続く」とした。

 まず2nm世代からさらに微細な半導体を製造するためには、高出力かつ高開口数(High-NA)の次世代EUV露光装置が必要とした。このために唯一のEUVメーカーである半導体露光装置の世界最大手、オランダASMLと共同研究を進めていることを紹介した。

 現状の先端半導体デバイスは「FinFET(フィン型電界効果トランジスタ)」構造を採用しているが、2nm世代以降から次世代トランジスタ「GAA(Gate-All-Around)」や「CFET(Complementary FET)」などの採用が進むと見込まれている(図3)。これを実現するためには、トランジスタ内のチャネルで二硫化タングステンなど新しい材料を適用する必要があるとした。

図3 トランジスタ構造の進化
図3 トランジスタ構造の進化
(出所:imec)
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