フィンランドNokia(ノキア)は2022年5月9日(現地時間)、同社の考えるメタバースのあり方とその実現に向けた構想を同社ブログに掲載した。2025年からXR(拡張現実)を活用した産業向け、一般消費者向けアプリが浸透し始め、2030年からは6Gを活用した本格的なメタバース時代が始まるとしている。以下はその概要となる。
関連ブログ: The metaverse will never move beyond our living rooms without a powerful network最近、メタバースに関する議論が盛んに行われている。現在、メタバースといえば、VRが生み出す仮想世界と屋内の物理世界をWi-Fiなどで接続するVRメタバースが主流となっているが、NokiaのビジョンはVRに制限されるものではない。Nokiaの考えるメタバースは、仮想世界に限定せず、デジタル世界と物理世界を真に融合するものとなる。
例えば、これまで屋内向けだったVRサッカーゲームも、好きな場所で楽しめるようになる。何もない場所でも、友人たちとXRグラスをかければ、サッカー場のタッチラインとゴールポストが見えるようになる。服にもチームカラーが重ねられ、両サイドの区別もつくようになり、3DアバターのAI審判がファウルやオフサイドを判定。人数が足りない場合は、チームメートを追加生成することもできる。
一般消費者向けのユースケースも魅力的だが、メタバースの最大の可能性は産業への展開にある。都市計画者がXRグラスをかけて現実世界を歩き回ることで、問題のある場所を特定し、仮想世界で再設計できるようになる。バス停を移動し、信号機を追加することで交通にどのような影響が出るのかを検証し、市全体のデジタルツインにアップロードすれば、市全体の交通網に及ぼす影響も確認できる。建設作業員は、デジタルツインで信号や横断歩道の場所を把握して作業を行い、歩行者は工事終了後の完成像を見ることができる。
こうした広い概念でのメタバースを実現するには、多くの革新的技術が必要となる。しかし、まず必要となるのは、柔軟性が高く堅牢(けんろう)なネットワークだ。現在の5Gを使っては、専用ヘッドセットを用いた初期の産業用ARや、スマートフォンを介した消費者向けARアプリケーションなどが存在するが、メタバースの可能性を最大限に引き出すためには、さらに高性能のネットワークを構築する必要がある。
2025年に5G Advancedの展開が始まると、最新のエッジ処理機能により、端末の一部機能がネットワークに移行。より小型のXRゴーグルやXRグラスが実現可能となり、メタバース体験は屋外にも広がっていく。上り帯域幅が拡張し低遅延になれば、応答性、操作性も向上。ポジショニングや同期、センシング技術が進めば、より大規模で洗練されたデジタルツインも実現可能となる。
2025年からは、こうした技術を組み合わせた産業、企業向けXRの導入が進む。2030年までに、安価で軽量なXRグラスが大量生産されるようになれば、一般消費者にも浸透し、メタバースの規模も拡大する。2030年からは6Gも活用することで、物理世界全体のリアルタイムなデジタルツインも実現できるようになり、本格的なメタバース時代が到来。単に物理世界で仮想空間を操作するのではなく、デジタルを介して物理世界を直接操作することもできる時代となる。
こうした大規模なメタバースは、社会に恩恵をもたらすものでなければならない。そのためにも、オープンで、高い相互運用性を持ち、安全で持続可能で、誰もがアクセス可能なものとなるべきだとする。
メタバースは巨大プロジェクトであり、地球規模の取り組みと生態系全体の協力なしには実現できない。Nokiaは、複数の分野にわたる最先端の研究を進めながら、ビジョンを共有し、必要なイノベーションをともに促進できるパートナーと積極的に協力していくと述べている。