米Enpower Greentech(エンパワーグリーンテック)は、同社が開発した高エネルギー密度のリチウム(Li)金属電池(LMB)が、第3者機関が実施した国連勧告輸送試験「UN38.3」に合格したと発表した。それだけでなく、釘刺し試験でも発火しないなど、高い安全性を示したとする。
同社は2021年10月に重量エネルギー密度が520Wh/kg、体積エネルギー密度が1100Wh/LのLi金属電池を開発したと発表している。
「既存のどの電池と比べても安全」
今回、Enpowerが受けた国連勧告輸送試験「UN38.3」は2000年代前半に相次いだ米国空港内でのLi金属電池の発火事故を受けて国連がLiイオン電池(LIB)全般に対して設けた輸出規則に基づく試験。LIBを船舶、航空、鉄道などで国際輸送する際にはこの試験に合格していることが必要になる。
今回試験した電池はエネルギー密度が450Wh/kgで、サイクル寿命は500回以上のもの。実施した試験項目は、低圧、温度、振動、衝撃、(高温)外部短絡、衝突、強制放電試験など。これらすべてに合格し、海上および航空貨物輸送の安全評価証明を取得した。さらに、釘刺し試験も実施し、発火しなかったという。既存の高容量LIBは釘を刺すと発火、爆発するものがほとんどである。
これに加えて、Enpowerは社内で、市販のリン酸鉄リチウム(LFP)系LIB、三元系正極のLIB、Liポリマー電池、高Ni正極とシリコン(Si)カーボン負極LIBの釘刺し試験を実施し、それらとの比較で同社のLi金属電池の高い安全性を確認したという。
Enpowerは、2022年第3四半期(Q3)に、ドローンや空飛ぶクルマ(eVTOL)、電気自動車(EV)向けの容量が11Ahや100AhのLi金属電池をサンプル出荷する計画。さらに、 2023年には年産100MWh規模、2024年には同GWh規模の生産ラインを建設する予定だという。